クレディスイス「警告顧みず利益専念」 アルケゴス報告書
クレディ・スイス・グループが、米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引で巨額損失が生じた問題をめぐる報告書を公表したという記事。
「報告書は法律事務所や外部の専門家が、
関係者約80人への聞き取りや
1000万件超の内部文書の分析などに基づく調査結果をまとめた。アルケゴスとの取引関係や破綻までの経緯を詳述している。」
50億スイスフランの損失が計上されたそうです。
「クレディ・スイスの取引残高は3月初めの時点で総額210億ドル(約2兆3100億円)に達していた。運用破綻の引き金は3月23日以降の米バイアコムCBS株の急落だ。アルケゴスは同社株を51億ドル分も保有していたが大幅に目減りし、他の運用株も値下がりした。同25日に28億ドルの追加担保を求めたが手遅れだった。」
アルケゴスの創業者には、前科がありました。
「創業者のビル・ホワン氏は12年に中国株の
インサイダー取引を摘発され、香港株取引から締め出されて運用対象を米国に移した。クレディ・スイスと同氏の関係は03年まで遡るが、
事件について特段の調査をした形跡はなかった。定例の信用調査も「通り一遍」で、投資銀行部門は運用成績の好調さなどを強調して取引を維持した。」
リスク(管理の?)担当者からは懸念の声が上がっていたそうです。
「19年にはアルケゴスが求めてきた担保比率の引き下げをのみ、同社への与信はさらに積み上がった。
危うい運用実態や与信集中にリスク担当者から懸念の声が度々出ていた。だが20年9月の
投資銀行部門の監督委員会は緊急対応の必要性を議論せず、同委員会は破綻直前の21年3月まで問題を協議しなかった。
報告書は投資銀行部門が目先の利益に走った結果、「アルケゴスを制御できず貪欲なリスクテイクを許した」と批判した。」
幹部への処分にもふれています。
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クレディ・スイス、報酬77億円を回収−アルケゴス損失の責任は個人に(ブルームバーグ)
「同行はこの問題に絡み幹部9人を解雇したほかボーナスを含め
報酬約7000万ドル(約77億円)を返還させた。合計で23人が処分を受けたと、同行が29日、法律事務所ポール・ワイス・リフキンド・ワートン・ギャリソンに委託した調査の結果と共に発表した。」
リスクは認識していたのに、それに対応する断固たる行動が取れなかったようです。
「調査報告によると、同行の
システムは正しくリスクを認識したが、リスクに対する「姿勢が怠慢」なプライムサービス部門が組織的にこうしたシグナルを無視したという。
報告書は「大規模で持続的な取引高上限の違反など
多数の警戒信号が出されていた。これらはアルケゴスの
集中的で不安定かつ担保不足のスワップポジションがクレディ・スイスにとって破滅的なリスクとなり得ることを示唆していた」と分析。
「アルケゴス問題は部門とリスク担当者の能力に疑義を抱かせる。アルケゴスのリスクの重大さと緊急性を理解するのに必要な全ての情報を持っていたにもかかわらず、
断固として迅速に行動する機会を一度ならず逸した」としている。
報告書は犯罪性はなかったと結論付けた。」
野村HD:4−6月純利益は66%減の485億円、米顧客損失が響く(ブルームバーグ)
「前四半期(1ー3月)に続いて米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとみられる顧客との取引による関連損失654億円を計上するなど一時要因の影響が大きく、大幅な減益となった。」
「米国の顧客取引に関しては、前四半期にすでに2457億円を計上しており、
最終的な損失は3111億円に膨らんだ。ポジション処理は全て完了したという。北村巧財務統括責任者(CFO)は同日の電話会見で、米顧客の一部の銘柄への集中投資と株価の急落が重なった「非常に
特殊な状況だった」とし、同社が
リスクを過小評価した結果、対応が遅れたとの認識を持っていると総括した。
現在、再発防止のための
リスク管理強化に取り組んでおり、社内での点検に続き、外部の目による点検を実施中だという。北村氏によると、他社と比較したリスクカルチャー、現場とリスク管理部門の連携、リスク管理部門の人員を含めた体制が十分かといったテーマで洗い出しを進めている。」
「特殊な状況」なのだから、巨額損失も仕方がないといっているようにも聞こえます。
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