日経の23日朝刊のコラム「大機小機」で会計士制度について取り上げていました(15面「公認会計士の就職難を考える」)。
ごく短いコラムですが、そこからさらに要点を抜粋しました。→のあとは、感想です。
・(司法試験と公認会計士試験の)両者に共通するのは、欧米を基準に頭で考えた
制度設計と社会のニーズがミスマッチを起こしている現実。弁護士や公認会計士の頭数を欧米並みにする前提は、法律や会計の専門家が法廷弁護士や法定監査人以外に、官公庁や民間企業で広く活躍することだが、日本はそうなっていない。
→ミスマッチはそのとおり。また、頭数自体も税理士を会計専門職と考えれば充足しているのでは。
・(公認会計士試験)筆記試験合格者の多くは監査業務に就くことを目指して監査法人への就職を希望するが、 年収500万円超といわれる初任給で未経験者を大量に雇えるのは大手監査法人に限られるのが現実だ。監査法人との
正式な雇用契約は実務経験を積んで公認会計士の資格を獲得した後とし、その間の
「試用期間」中は 報酬を現状の半分程度に抑えてはどうか。
→監査法人の経営的には、また、社会的な相場からいっても、初任給は高くなりすぎているのでしょう。ある程度下げるのはやむをえません。しかし、合格者からすれば、当初3年間を年収250万円で我慢するとしても、その後の身分の保証がないというのは相当きついと思います。年齢的には平均で30歳近くになっています。そもそも、そんなに長い「試用期間」が法律上認められるのか、正式雇用する人をどうやって選抜するのか、経験の乏しい新人ばかり単価が安いからといって現場に送り込まれてもクライアントには迷惑ではないか(かといって事務所勤務では実務経験にならない)、など問題がありそうです。(監査法人にとっては、割り増し退職金を払わなくても、正式採用時点で人を減らすことができるので、有利な話ですが)
・「顧客」の企業と公認会計士の
四大監査法人への極端な集中は、寡占の弊害を指摘されて久しい。業界と行政は、 中堅監査法人の育成による分散を真剣に考えるべき。
→「育成」といっても何をするのでしょうか。監査法人への検査で、あまり、細かい形式的な指摘をしないことぐらいしか思いつきません。なお、会計士協会ではすでにいろいろとやっているようです。
・会計・監査の市場環境にも改善の余地がある。 会計情報の利用者、とりわけ金融機関が融資条件として公認会計士の監査証明を企業に求めるべき。
→融資先の大部分は中小企業ですが、監査のコストを考えると非現実的。それこそ、EUの欧州委員会で検討しているように、中小企業向けの(監査ではなく)レビュー制度を考えては。
・会計専門家の公認会計士が税務を扱えない日本の常識は世界の非常識。
→公認会計士は税理士登録すれば税務を扱えます。独立性などの理由から、監査をやっている会社の税務をできないこと(これも日本独自の規制)とごっちゃになっているのでは。監査法人が税務をできないというのはたしかに問題ですが、大手や中堅の監査法人は、多くの場合、系列の税理士法人をもっているので、大きな支障は生じていないように思えます。ただし、税理士会は、あらためて試験を受けて合格しないと、会計士が税務をできないようにしようと運動しています。
バスケ岡田選手、公認会計士合格 アジア大会男子日本代表(時事)
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