財務省は生まれ変われるか?再生プロジェクトの中身を元財務官僚が検証
不祥事続出の財務省が10月19日に公表した「財務省再生プロジェクト進捗報告」について、批判的に取り上げた解説記事。元財務官僚の大学教授が書いています。
「筆者は、財務省の組織としての最大の問題は、
過度に政治化し、専門性が疎かになっていることだと考えている。それは、一連の不祥事の根源的な問題だ。
財務省は霞が関の中でも、予算編成や税制改正などを通じて、政治家とのつながりが強い役所であり、政治家との調整が重要である。人事面においても、政治家と調整できる能力が評価され、
専門性に基づく経済や財政の分析は二の次である。これに対しては、本来は政治家が担うべき仕事を役人がやらざるを得ないからだという反論もあるだろうが、他国の財務省とは大きく異なっている。
筆者は、国際会議などで諸外国の財務省の担当者と会う機会があるが、彼らの多くは経済学の博士号を有している。日本の財務省に、経済学の博士号を有するチーフエコノミストはいるだろうか。また、法曹や会計士の資格を有する職員も財務省には必要だが、今の財務省に何人いるだろうか。報告書でも、「経済分析能力の強化をはじめ業務横断的な専門能力を強化する」といった記述はあるが、コンプライアンスなどと比べると、課題としての重要性は低く扱われている。」
「たとえば、
消費税の軽減税率や教育の無償化などは、
高所得者をより優遇するものであるにもかかわらず、費用対効果の分析も乏しく、導入が決まってしまった。もちろん、民主主義のプロセスから言えば、最終的には、政策は内閣が判断すべきことになるが、財務省が証拠やデータに基づいてどこまで問題を提起し、議論を喚起しただろうか。
年末に発表される政府予算案の資料では、いわゆる埋蔵金(特別会計の積立金)を一般会計の歳入に繰り入れると、一般会計の財政赤字が減り、財政が健全化していると説明する。しかし、そのようなわけがない。諸外国のように、予算案策定時に、
一般会計と特別会計を統合した貸借対照表を作れば、積立金の取り崩しにより財政が悪化することがわかるが、財務省はそのような資料は作成しない。」
「財務省でも、主計局・主税局・国際局は、その局で課長などを務めずに局長になることはほとんどないが、関税局・理財局・財務総合政策研究所、そして国税庁は違う。課長の
経験がない人が落下傘のように、突然局長や国税庁長官となること多いのだ。これも専門性が疎かになっている事例である。」
「内部統制と言うと、「統制」という言葉のイメージから身構えてしまいがちだが、実はそのようなものではない。長時間労働や働き方を見直すためには、まずは現在の業務内容やプロセスを分析し、どこに無駄があるか、どのプロセスを省力化できるか、どこに不正や間違いを犯すリスクがあるかを考える必要がある。電子決済などICTの活用も必要となるが、
とかく役所は現在の仕事をそのままにしてICTを導入するので、システムの構築や運営に
膨大なお金をかける一方で、仕事は効率化しない。」
「毎年、予算編成は夏から12月まで続くが、半年も来年度の予算要求作業に費やしている国は、先進国ではあまりない。要求作業にエネルギーを使い過ぎているから、
事後評価が疎かになり、予算や事業が効率化しないのだ。諸外国では、予算は中期財政フレームで3〜4年の大枠を決めているので、毎年細かい査定などは行わない。毎年の予算編成は、政治的に重要な事項など、戦略的な問題に注力している。」
財務省(旧大蔵省)から枝分かれした金融庁も同じようなことがいえそうです。
企業開示の分野をとっても、素質的には優秀なのでしょうが、特にすぐれた専門的見識・経験を有しているとも思えない人が責任者になって、自分の短い任期中に結論が出て実績になりそうなプロジェクトを次々と立ち上げ、関係者がそれに振り回されている状況のように見えます。
財務省再生プロジェクトについて(財務省)
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