「第三風動」の思い出  音楽

杵屋正邦作曲の尺八三重奏曲「第三風動」について書いてみたい。

杵屋正邦は長唄出身の作曲家で「日本のモーツァルト」と言われるくらい多くの作品がある。
長唄出身だけに、長唄三味線や箏、尺八まで作品の範囲は広い。数々の現代邦楽作品はヒットを飛ばし、尺八三重奏曲の「風動」は尺八三本会(青木鈴慕・山本邦山・横山勝也)の初演以来、シリーズとして「第五風動」まである。

尺八三本会の演奏会で「風動」が大人気となり、続けて「第二風動」も人気で、当時学生だった我々はすぐに楽譜を先生からいただいて、演奏会で発表した。その頃、尺八の練習は主に地唄を練習していたが、学生は皆この曲に飛びついた。腕がそこまでいっていないにもかかわらず。
「風動」の人気は分かりやすいメロディーやハーモニー、そして何より尺八本曲風のソロのメロディーがあり、それを横山勝也が派手に演奏したのが受けた。又、3人のソロが平等に入っているし、尺八の長さが違うので個性が発揮できたのが気に入った。
この頃、各地にミニ三本会が結成された。

こうして1970年(昭和45年)秋に青木鈴慕は杵屋正邦に「第三風動」の作曲を委嘱する。
人気の尺八三本会は皆それぞれ忙しく、横山勝也は海外で「ノベンバーステップス」を演奏していた。
やがて演奏会近くに作品が出来上がったが、横山勝也がいない。
そこで青木鈴慕師は私を呼んだ。事前に杵屋正邦に演奏を録音して聞いていただくためだ。
あらかじめ青木先生から楽譜をいただいて練習をして後日、山本邦山(以下邦山)宅に一緒に伺った。
あこがれの邦山は初対面でも大学4年生で22歳の若造を、気さくに迎えてくれた。
ニ階に通され、第一尺八は青木鈴慕。第二尺八は本来邦山だったが、私は長管は吹けないので私が第二尺八で、第三尺八を邦山が演奏した。
少し練習しては、途中の番号までカセットテープに録り、最後までその繰り返しだった。
だから細切れの録音で、全曲通しの録音はなかった。
鈴慕師には「最初の当たりをハッキリと」と言われたくらいで、すんなり終わった。
邦山は「杵屋節だね」と一言。
後日、鈴慕師に「あのテープ、杵屋正邦に聞かせたよ」とニコニコして言われて、うれしかった。

当然、横山勝也を加えた尺八三本会(上野文化会館小)の「第三風動」の演奏は実に素晴らしかった。
   参考
      風   動  尺八三本会委嘱作品  昭和39年
      第二風動  N H K 委嘱作品      昭和43年 
      第三風動  青木鈴慕委嘱作品    昭和45年
      第四風動  作曲者自主作品     昭和56年
      第五風動  尺八三本会委嘱作品  昭和62年

杵屋正邦(1914〜1996)、横山勝也(1934〜2010)、山本邦山(1937〜2014)は既に故人となられて、あのゴールデンメンバーによる演奏が聞けないのは残念である。




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