今月のベスト3  オンエア・クラシック

今日で2月も終わり。テレビ放送やDVDで見たオペラをふり返って、今月のベスト3をば…
1.声のバトル
 コシ・ファン・トゥッテより
 (グラインドボーン音楽祭 2006)

 1幕の最後、狂言自殺までして求愛する男性陣が「キスして」と迫ったことから姉妹が怒り出し、「毒が回って死んでしまえばよかったんだわ!」と始まる重唱。姉妹はカンカン、男性陣はおもしろがってノリノリ。ドン・アルフォンソとデスピーナも和して六重唱は、それぞれのパートの人物像や思惑まで垣間見える声のバトルです。「オペラは舞台が見えなくちゃわからない!」と思う私でさえ、この場面だけは映像がなくても演技や表情を思い浮かべることができるアンサンブルです。

2.夜の女王の闘争
 〜モーツァルト「魔笛」より〜
 指揮:コリン・デイヴィス
 演出:デイヴィッド・マクヴィカー
 夜の女王:ディアナ・ダムラウ
 コヴェント・ガーデン王立歌劇場(ロンドン・2003年)
2005年にテレビ放映されました。DVDも発売されています。
◆@TOWER.JP



夜の女王はザラストロに一人娘のパミーナを奪われただけでなく、夫の死で手に入るはずだった昼の国の支配権も受け継ぐことができません。ディアナ・ダムラウは女王の無念と、それらを奪還せんとする執念を全身で演じます。

1幕、タミーノの前に青く冷たい宝石のような瞳をキラキラさせ、ヴェールをひるがえして登場。「恐れなくてもよい 愛する息子よ」と歌い始める声はゾクッとするほど艶があります。無念を隠さず煩悶し、舞台狭しと歩き回り、めらめらと燃えるザラストロへの怒りの炎さながらに声の調子を自在に変えて迫ります。

2幕、パミーナには高圧的に命令します。コロラトゥーラはまるで青い火炎放射。客席に向かって声の威厳や流麗を披露するのではなく、パミーナに向かって「必ず果たすのだ!」と命令する権力闘争の鬼。

かたや力と栄光に執着する母、こなた「男がいないと女はとかく本分を踏み外してしまうものだ」と言ってのけるオッサン。やれやれ…歌と演技のかっこよさでは断然夜の女王なのですが…。

3.ソプラノの少年(脳天気型)
 〜ヴェルディ「仮面舞踏会」より〜
 指揮:リッカルド・ムーティ
 演出:リリアーナ・カヴァーニ
 オスカル(小姓・ソプラノ):オフェリア・サラ
 ミラノ・スカラ座(2001年)
2005年にテレビ放映されました。
リッカルド・ムーティが指揮する東京での演奏会とイタリアでのオペラ4公演(トスカ、イル・トロヴァトーレ、仮面舞踏会、ファルスタッフ)を放送したシリーズの4日目。連日非業の死を遂げては翌日また主役で蘇るサルヴァトーレ・リチートラ。あまり芝居っ気のない歌劇団(イタリアオペラはこんなものなのかしら?)、陰謀と裏切り、斬ったはった脅した復讐したのドロドロ劇。いやになりかけていたところへ聞こえてきた脳天気少年のソプラノは一服の清涼剤でした。

ほとんどビヴラートをかけないスキッとした発声がよかったです。このようなドロドロ劇の渦中、しかも主人公のすぐ側にいながら、そういう大人の世界のことは気づきもしない脳天気少年、これもう天然記念物。劇中だけの存在。一点の曇りも外連もない、この歌声こそふさわしい。

1幕、女占い師を追い払えと進言する部下の言葉にリチートラ@リッカルド総督から「お前はどう思う?」と聞かれたオスカル。「私はかばってやります」と答えて歌い始める「輝く星をごらんなさい」は、真っ直ぐ総督の心に届きます。総督が「それでは身分を隠して行ってみよう」と皆を誘う「楽しみに行くために用意して」は、横並び、前向き、棒立ちもOKのわくわくする大合唱。うん、リチートラは体育会系のキャプテンがハマりかも。

そして終幕、リッカルドの命を狙うレナートに「総督の仮装は?」と聞かれ、「オスカルは知ってるけど言わないよん♪」と歌う「どんな衣装か見たいだろう」。この期に及んでまだ気づかんとはっ。と突っ込みながら聴くのもたのし。

1ヵ月の速習では、オペラの深淵まだ遠く、でもほんとに楽しかったです。これからはテレビで放送される作品を見て親しみを感じたら、その伝説的名演の音盤を追っかけて行くことにします。まずはモーツァルトかな。
0




AutoPage最新お知らせ