パンズ ラビリンス  映画

 スペイン映画「パンズ ラビリンス」を観てきました。

 「大人のためのダークなファンタジー」などとされているこの作品、たしかPG12だったかな。舞台はスペイン内戦後、パルチザンを掃討する小さな部隊の駐留地。凄まじい暴力の一端も描かれているためです。

 感情的に揺さぶられる佳境はラスト十数分に尽きるのだけれど、ミステリアスでダークなファンタジーと、抗いようがない恐ろしい現実が交互に描かれる画面に最初から引きこまれました。ファンタジーは少女の心象世界であるゆえ、彼女だけがその両方を行き来します。ところがラストシーンは、そのファンタジーと現実が同時に、ひとつの地点に達します。

 幻想と現実がどんどん絡みつき、交錯する物語をドキドキしつつも楽しんでいた私は、そこに至り、殉教者の内面を突きつけられたようで、なんとも痛かった。少女の魂が救われたとて、カタルシスどころではありません。思想、哲学は人間を物理的に救えない。魂が救われたと感じる人は、運命のラビリンスのどこかで、自らを救う道を(救われようとは思わずとも)、自主的に選び取って進んだのだなと、隣に座った行きずりのお姉さんといっしょに涙が止まらなかったのでありました。

 でもそれも厳しいよ。「これこのように、救われた魂は幸い」と、誰が言えるのだろう。映画を観る私は、もうひとつの命が助かったことに救われたのだわ。

 実はこの後、ジョディ・フォスターの 「ブレイブ ワン」 を観に別館へ走ったのでありました。弱肉強食という言葉が定義する「強者」とは、この主人公ように強毅、剛健な人のことなのでありましょう。大昔から、何人もいたに違いありません。十代の私など、憧れたものであります。

 でもこの日は、ブレイブ ワンズよりはるかに多いはずの、名もない弱者のことを考えつつ、時間のやりくりをしてもラビリンスを観に行ってよかった〜と思ったのでした。
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チャイコフスキー 四季(管弦楽版)  CD・レコード

 巷はとっくにクリスマス飾り、商戦はお正月までいっちゃってる晩秋かな。街角では木々から壁面の蔦に至るまで、じっくりしっかり紅葉を見せてくれているというのに。

 でその … 「自然に移ろいゆく季節をゆっくり眺めんかいっ」と言いつつ、夕餉の支度で暖まった部屋にチャイコフスキーの「四季」を。料理はいいよ。お湯をわかしてカップスープだけでもいいけど、なんか切って鍋に入れてみ。ソーセージのシッポを口に放り込んだり塩加減をみたりしているうちに、とりあえず落ち着くし、部屋暖まる。

 え〜、それで「四季」。今年夏頃にFMで放送されたエフゲニー・スヴェトラーノフ指揮の管弦楽版(アレクサンドル・ガウク編)。

チャイコフスキー:『四季』(管弦楽版)


 1月「炉ばたで」。この曲に添えられたプーシキンの詩はどんな情景を描いているのだか。スヴェトラーノフは、昔語りをする好々爺になりきっております。

 特に中間部がよいのであります。オーボエが呼びかけ、それにホルンの和音とハープのアルペジオが応えます。ふたつのパートの掛け合いが、ピアノ版にはないイメージのふくらみを創り出しています。そのフレーズをを3回演奏し、やがて発展していきます。子どもが好む「繰返し」の心地して、昔話がひもとかれたときの安息と期待感が広がります。様々な楽器による音色の変化が、イメージをより豊かにしているのでしょうね。

 さすがです♪ 「掴み」はこれでキマリ。聴き進んでいくと、メロディーの叙情で聴かせる6月「舟歌」などはピアノで、とも思いますが、管弦楽のアンサンブルによって初めて気づかされる曲想もあり、なかなか楽しめました。

 スヴェトラーノフの指揮で聴く管弦楽版「四季」は、一連の詩をアナウンサーが朗読するような、抑制のきいた表現です。2月「謝肉祭」や8月「取り入れ」、9月「狩り」、11月「トロイカ」といった生き生きと明るい曲も、ロシアらしい熱狂や舞踏シーンのような高揚感はひかえめです。多少濃淡はあれど、全編これフォークロア調の小品、しかも厳選の音色をソヴィエト国立響のソリストが奏でるとなれば、あとは聴衆の心象におまかせ、かな。
(しかし、11月のホルンはどうした、シッカリせんかい!)

 そんなふうにして、ロシアの四季を旅するのはあっという間。そいじゃ原曲を聴こうかなというときには、リヒテルのピアノがしっくりきます。スヴェトラーノフと同じく、情緒的に振り切れることはありません。でもココというフレーズには、ごつい指から思い入れが鍵盤にぐいと込められるように聞こえます。11月「トロイカ」の、凜としたタッチ、キラキラと輝く雪面、滑り行く橇のような分散和音はどうよ。ジャケット(裏面)にあるとおり、これはリヒテルの詩情。全曲版は、あるのかしら。

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 チャイコフスキー:四季
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