ナチョ・ドゥアトのロミオとジュリエット  バレエ・ダンス

 24日のボリショイに続き、29日はスペイン国立ダンスカンパニーびわ湖ホール公演「ロミオとジュリエット」を観てきました。ナチョ・ドゥアトが1998年に振り付けた、彼の唯一の物語バレエ(ダンス、か?)だとか。私はナチョの作風とか、このカンパニーのダンスについては何も知りませんでしたが、極端な翻案ではなさそうだと見当をつけ、チケットを買いました。

シェイクスピアの戯曲に基づく2幕のバレエ
「ロミオとジュリエット」

日時:2008年11月29日15時開演
会場:びわ湖ホール 大ホール

振付:ナチョ・ドゥアト
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
指揮:ペドロ・アルカルデ
管弦楽:関西フィルハーモニー管弦楽団

舞台美術:カルレス・プヨル、
     パウ・ルエダ
衣装デザイン:ロルデス・フリアス
照明デザイン:ニコラス・フィシュテル
オリジナル・プラン:ミゲル・アンヘル・カマーチョ

《キャスト》
ジュリエット:ルイサ・マリア・アリアス
ロミオ:ゲンティアン・ドダ
キャピュレット夫人:アナ・テレザ・ゴンザガ
キャピュレット:ディモ・キリロフ
マキューシオ:フランシスコ・ロレンツォ
ティボルト:クライド・アーチャー
乳母:ステファニー・ダルフォン
パリス:アモリー・ルブラン
ベンヴォーリオ:マテュー・ルヴィエール
スペイン国立ダンスカンパニー

 いや〜、よかったです。ナチョの語り口 ― その舞踏言語をふんだんに盛込んだソロ、デュオ、群舞のシークェンス ― に気分よく酔いました。カンパニーのダンサーたちは身体能力とナチョの振付による「演技」に優れており、私は彼らが大好きになりました。

 また舞台セットは、シンプルな板や布が照明を得て場面を縁取り、ダイナミックに転換していきます。幕と同じ大きさの布、クローゼットの引き出しのような仕組みの台、台の後ろの壁に開いたり塞がったりする窓や入口など。

 アルカルデ指揮、関西フィルの序曲は、温かみのある音ではじまりました。悲劇ではありますが、この日の演奏は優しく、小春日和のように穏やかな木管と、泣きすぎない弦が舞台を支えていました。終盤、緊張感のある弦の高音も、情感の表現はダンサーにまかせて粛々としたもの。私はとても好感を持ちました。 

 この作品におけるナチョの語り口は、私がこれまで観てきたどのバレエ「ロミオとジュリエット」よりも饒舌で早口。ナチョは
「プロコフィエフの楽曲はそれ自体が既にストーリーを孕んでいるので、振付家はさほど多くのことをなさなくていい。ただ、音符をムーブメントに移し替えていけば、完成されたバレエができあがるのです。」(埼玉公演のパンフレットに掲載されたインタビューより)

と話したそうですが、私は、シェイクスピアの脚本に書かれた「言葉」をすべてムーブメントに移し替えたように感じたものです。古典バレエの厳格なポジションやラインに縛られず、体の様々な動きを発見し、舞踏言語を編み出し、間断なくかなりの速さで次々に繰り出していくナチョの振付からは、すべての登場人物の台詞や内なる声が聞こえてきそう。ですから、ダンサーのムーブメントが、まるごと芝居というパフォーマンスだと感じました。

 ロミオは軟派な青年として演じられることもありますが、この日のドダくんはロマンチストで真面目なロミオ。アリアスのジュリエットは賢い牝鹿のよう。別れの朝、部屋を出て逃げるようにロミオを促すほどのしっかり者。

 また、冒頭の町衆の中から若い女のキャラクターをちょっと引き立てたり、キャピュレット家の舞踏会でモンタギュー党の若い衆の演芸を挿入するなど(音楽はコミカルな3拍子、トランペットとマンドリンの…)、背景描写も手抜かりなし。女王様の風格さえ漂わせた華麗なるキャピュレット夫人、それに男盛り(だが妻の心は他に…)のキャピュレットにも、カッコいいソロや見栄切りの場を与えています。

 そしてジュリエット服毒後の物語の疾走は、数あるバレエ・ダンス作品「ロミジュリ」の中でもダントツ。ホンモノの毒を飲んだロミオが、仮死状態のジュリエットの体から、ずるずるとくずおれていき、それを追いかけるようにジュリエットの手がもちあがる場面には、虚を突かれてハッとしました。

 プロコフィエフの音楽に最大の敬意を払うナチョによる「ロミオとジュリエット」は、うまい仕掛けの舞台にくり広げられるダンスという言葉の戯曲でありました。ああ、満足。
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ボリショイバレエ@びわ湖ホール 明るい小川  バレエ・ダンス

 今朝は薄日も差していた関西、お昼前から降り出した雨を背負ってびわ湖へ。ボリショイバレエ団「明るい小川」を観てきました。

 脚本 A.ピオトロフスキー、F.ロプホーフ、
 音楽 D.ショスタコーヴィチ、
 振付 A.ラトマンスキーによる2幕のバレエ
ロシア国立ボリショイ・バレエ
明るい小川
ブライト・ストリーム〜ある田園の風景
 
 日時:2008年11月24日14時開演
   (終演15:50ごろ)
 会場:びわ湖ホール(大ホール)
 指揮:P.クリニチェフ
 管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団

《キャスト》
ジーナ(ピョートルの妻):E.クリサノワ
ピョートル(農業技師):A.メルクーリエフ

バレリーナ:M.アレクサンドロワ
バレエ・ダンサー(バレリーナのパートナー):S.フィーリン
アコーディオン奏者:岩田守弘

初老の別荘住人:A.ロパレーヴィチ
その若作りの妻:A.ヴィノクール
ガヴリールィチ(品質検査官):A.ペトゥホーフ
ガーリャ(女学生):K.プチェルキナ
搾乳婦:A.アントローポワ
トラクター運転手:I.プラージニコフ
 他、ボリショイバレエ団

 いや〜、ただひたすら、とーっても楽しかったです。ジンセイとかアイロニーとかココロの機微なんてものを深読みしなくていい、舞台上に見えるコメディをそのまんま楽しむ作品。主役、準主役、脇役、コールド、今日のダンサーはみんな好き好き。

 コルホーズのクリサノワとメルクーリエフそして芸術慰問団のアレクサンドロワとフィーリンという、主役カップル2組が、ほとんど地のままで脚本どおりのコントラストをなしているように感じました。メルクーリエフ、マリインスキー時代にラトマンスキー版の「シンデレラ」王子で見て以来5年ぶり。大人になって、男ぶりをあげたな〜。それでいてどこかちょこっと2枚目半なとこがいい。

 特に、アレクサンドロワ! 男装で踊るところは、ある意味フィーリンさんより男前だと思ったよ。今日の舞台で彼女のファンになりました。これまで観てきたガラの衣装ではどうしても、上半身のごつい感じが気になって、苦手な「バレリーナ」でした。でも今日の衣装はよかった。ラトマンスキー作品を踊る彼女は素敵なダンサーだ。12月、大阪の白鳥でも、彼女の魅力を再見、新発見するぞ♪

 フィーリンさんのバレリーナは思ったより出番が長く、お芝居、踊りも盛りだくさん。あれだけ演技して、バレリーナらしいラインを要所でキメて、笑えるキャラを作って。。。ほんとにダンサーを引退しちゃうの? 古典の王子はもう踊らないとしても、何か新しい脚本で(コメディだけじゃなく)あのスター性をもっと観たいです。

 それから女学生ガーリャ役のプチェルキナが、小柄でお芝居上手でかわいらしい。

 そして岩田さん!
 彼は紛うことなきボリショイの団員、ロシア人なんだな。女学生ガーリャとのエピソードが楽しい。なんていうか、そこにいて芝居して踊っているのがほんとにあたりまえ、自然なのよ。ロシアって、ヨーロッパからアジアの東の果てまで広がっていて、「芸術慰問団」なんていう旅回りのエンターテイナーは東洋系やらコーカサス系やら、いろいろいるんだものねえ…と。

 最後に…フォルティシモで吹き鳴らしても絶対コケないトランペットといい、オーケストラは堅実で盛大でした。楽器がいっぱい、オケピはぎゅうぎゅう。

 ブラヴォー、ボリショイ!

 帰りの電車は西の空、僅かに残った夕焼けの残照に向かって走るのであった。
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