ミュージック・ボックス  映画

 映画通の友人に「コスタ・ガブラスの法廷劇はどう?」と勧められた作品。東西冷戦末期のアメリカが舞台。主人公がハンガリーのブダペストに行く場面もあります。

Music Box(1990年、アメリカ)

監督:コンスタンチン・コスタ・ガブラス
脚本:ジョー・エスターハス
撮影:パトリック・ブロシェ

キャスト
弁護士 アン・タルボット:
 ジェシカ・ラング
その父 マイク・タルボット:
 アーミン・ミューラー・スタール
アンの息子 マイキー:
 ルーカス・ハース
義父が付けてくれた補佐 ジョージン:
 Cheryl Lynn Bruce

 弁護士アン・タルボットは、ハンガリー移民の父親に男手ひとつで育てられた。その父親が、第2次大戦中のユダヤ人虐殺の嫌疑をかけられ、ハンガリー政府から身柄の引き渡しを求められる。アンは無実(人違い)を主張する父の弁護を引き受けるが、裁判が始まる前から状況は不利だった。裁判では、ハンガリーから召喚された証人が、ミシュカと呼ばれた男のおぞましい罪状を証言していく。アンは少なからず動揺しながらも、義父の協力を得て、検察の追求をかわしていく。

 映画の後半、検察側が立てた病気の老人の証言を審理するため、判事、検察官とともに共産党政権下のブダペストに渡ったアンは、そこで有利な証拠資料を手に入れる。おかげで父親の有罪の立証は不可能となり、アンの父親はハンガリーへの送還を免れる。

 しかし、アンには父が金銭を援助していたゾルダンの事故死についての疑念があった。それは、義父が付けてくれた補佐のジョージンが、公判中からハンガリーに出発する直前まで、「見落としてはならないこと」として示唆してくれたからだった。

 アンはゾルダンの姉を訪ね、そこで衝撃的な事実を知ることになる。彼女はゾルダンの遺品からアメリカの質札を預かって帰国する。質札から引き出されたミュージック・ボックス(オルゴール)に隠された写真によって、アンは真実を知る。彼女は父親を激しく問い詰めるが、父親は頑なに無実を叫ぶばかりだった。アンは証拠写真を新聞社に送る。


 見終わったときには、とても重苦しい気持ちだった。ハンガリーから召喚された犠牲者や目撃者の証言から連想する膨大な数の、踏みにじられた霊を思うとき、それはもちろん辛いのだけれど、その他にもうひとつある。あの、戦争犯罪を認めようとしない父親。自分の罪に向き合えないもの特有の、話のすり替え、思考停止と傲慢と。それを見るのも、私は辛い。

 時代と社会が平凡な農夫を獣にしてしまう、それが人の世なのだと思うとやりきれない。でもよく考えてみれば、アメリカに逃げのびてからの彼は、反共の仲間に入って姑息に人を攻撃することを続けていた。告発された後も、隠しおおせない品性があちこちのほころびから垣間見えていた。弁護士補佐のジョージンは、それを見抜いていたのだな。

 救いはラストシーン、12歳のマイキーだった。もうほんとに、彼がいなかったらどうなっちゃっただろうか。祖父が再び告発されるという朝刊を持った母親(アン)が、学校へ行こうとするマイキーをおしとどめ、話をするために鞄を下ろさせる。マイキーはうろたえたり、戸惑ったりしていなかった。大人たちの様子や裁判を見て、何かを感じとっていたのだな。大人たちがどんなふうにこの事件に決着を付けるか、じっと見ているしかない、賢い子。いよいよ決断した母親の様子をすぐに察知し、母親を支えるようにしっかり寄り添うマイキー。ベンチに座る母と息子、扉のこちら側からカメラだけが回る台詞なしのシーン。

 潔癖、正義、そして「爺さんのためじゃない、孫のためだ」という義父の声。いかにもアメリカらしい落としどころなのかもしれない。私は正しいことが行なわれたことよりも、とにかく老人の過去にマイッタ。眠れなくてウロウロし、フォーレのレクイエムなどかけてみたが、そういうのは見当はずれであった。感情移入しすぎ。
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