ベロフのドビュッシー  CD・レコード

 フランスのピアニスト、ミッシェル・ベロフ(1950年生まれ)を知ったのは、2007年放送のテレビ番組「ぴあのピア」、ドビュッシーのシリーズ。彼が演奏するアラベスク第1番や前奏曲集のふわっとした響きがスピーカーから流れ出すと、柔らかな光と豊かな色彩の空間が現れる心地がしたものです。身を浸すことはできるが捉まえることができない…たとえば水の粒か光のように…そんなドビュッシーは初めてでした。

 70年代のベロフを知るオーディオ・マニアのモーツァルト党は、「1つ1つの音がはっきり聞こえん」と失望していました。そう、音の粒立ちは譲れないポイントだね。…でも たまには漉し餡もいかが?

 最近になって、我が家にはベロフ1979〜1980年の演奏をCDとして再リリースしたものがあるのに気づきました。
(↓は2006年発売の同盤)

@TOWER.JP
ドビュッシー:月の光(ドビュッシー/ピアノ名曲集)

 収録曲は「ベルガマスク組曲」、「2つのアラベスク」、「子供の領分」各全曲と「レントより遅く」、「小さな黒人」。

 私がこれを買ったのは10年以上前のことですが、その印象は「ぴあのピア」で聴いたものとは全く違いました。楽譜を立派に弾きこなした演奏だと感じただけで、すぐ忘れてしまったのでした。

 ベロフは1967年、第1回メシアンコンクールに優勝。超絶技巧と力強い打鍵でプロコフィエフやムソルグスキーを弾き、メシアンを得意とし、ドビュッシーを弾いては従来のどんな演奏とも違うともてはやされたとか。

 確かにこのCDで聴く演奏は、力強い音で旋律をくっきりと歌います。そりゃもう、ガンガンいうくらいキッパリと強いけれど、ミューズが1人しかいない。大きな翼を広げた勝利の女神ニケあたり…そんな気がします。

 もちろん、高い技術に裏付けられたみごとな演奏もあります。アラベスク第2番などは、確実な打鍵と音色の変化がとても効果的。まろやかで流れのある第1番とは対称的に、細かな文様がくるくると動き回って眩暈を誘うような面白さが表現されています。

 ところでベロフは、一時期 手首を痛めてしばらく演奏活動を休止しています。そして復調後に録音したドビュッシーのピアノ曲集がこちら。1979、1980年の録音と比べることができます。

ドビュッシー:前奏曲集第1巻

 収録曲は「前奏曲集 第1巻」全曲、「スケッチブックから」、「コンクールの小品」、「ハイドンをたたえて」、「かわいい黒人の子供 」、そして「子供の領分」全曲。1994、1995年の録音。

ドビュッシー:ピアノ作品集

 収録曲は「ベルガマスク組曲」と「2つのアラベスク」各全曲、「ボヘミア風舞曲(ジプシーの踊り)」、「 バラード(スラヴ風バラード) 」、「夢」、「ロマンティックなワルツ」、「夜想曲」、「マズルカ 」、「舞曲(スティリー風のタランテラ)」、そして「ピアノのために」全3曲。1995、1996年の録音。


 若い頃のベロフを知る人は、「おっ、彼は変わったね」と感じるそうです。私もそう思います。20数年前の演奏に比べ、音が柔らかく色彩感が豊かだと感じます。録音環境の違いだけではないと思います。

 でも「ぴあのピア」の演奏を至高のものとする私としては、この演奏は まだ過渡期のものかと。アラベスク第2番などは、ファンとしてちょっと悲しくなるくらい、持て余している感があります。同じセンで行こうとしても、若いときにしかできないことって あるよな〜・・・と。

 とはいえ、このときベロフの奏でるドビュッシーにはミューズが何人もいて、楽器を奏で、歌い、舞っています。聴く者に豊かなイメージを想起させる響きなのです。いちばん好きなのは「子供の領分」から「雪が踊っている」。ベロフのピアノから、さまざまな形の結晶が舞い散っていきます。


 写真は先日、びわ湖ホールのコンサート後。湖の東岸を雨の柱がかなり速いスピードで西進。太陽は西の空高く、飛ぶ雲にときおり遮られながら照っていました。動いてゆく雨の柱と気まぐれな光のおかげで、儚い虹が浮かんでは消え、また現れ…一期一会のコンサート のち、光と水のデザートなり
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