グルジアバレエ2010 びわ湖公演  バレエ・ダンス

 グルジア国立バレエ団の踊る芸術監督(プリマ・バレリーナにして芸監)、ニーナ・アナニアシビリは、10歳頃にはジュニアのフィギュア・スケーターとしてどこぞの大会で1等賞を取るほどだったとか。その後、トビリシのバレエ学校、モスクワのバレエ・アカデミーを経て1981年にモスクワ・ボリショイバレエ入団。ソ連崩壊後はアメリカン・バレエ・シアターなど、西側のバレエ団でも活躍し、日本にもファンが多いそうです。

 私がニーナを知ったのは2003年頃です。90年代から続いている「ニーナと仲間たち」のVHS映像を買い、繰り返し見ていました。そして「仲間たち」日本公演(2004年2月)を、びわ湖ホールで観ました。ボリショイ・バレエ団のプリンシパルのほか、グルジア・バレエ団のコールドも引連れて、ファジェーチェフがアレンジした「白鳥の湖」の他、コンテンポラリー2作品を上演しました。あの時は、ニーナの温かな人柄が会場全体に行き渡ったのか、1階後方の客席から舞台袖に向かって、子どもや女性が何人もかけよって拍手していました。

 今年は、2004年から芸術監督を務めるグルジア・国立バレエ団を率いての来日公演です。サアカシュビリ大統領に依頼されて引き受けた芸監だとか。2004年の「白鳥」では、コールドがすらりと細身の若手ながら、フォルムがなんだか違うな〜と感じたものですが、今回はニーナの薫陶6年を得たバレリーナたちを見るのが楽しみでした。

 でも今日はロミジュリ。20世紀のソ連作品とて、トゥ・シューズで踊るソリストはジュリエットとその友人数人のみ。チュチュを着た古典、ロシア帝室バレエとはちと趣が違いました。


 キャラクター・ダンスは、大柄な女性ダンサーが指先まで丁寧に、またダイナミックに溌剌と踊っていて、生きがよかったです。群衆の演出もよくこなれていて、フェンシングから雑踏シーンまで、舞台に広がりが感じられました。

 キャラクター系は、男性、女性とも大柄でスタイルのよいダンサーが要所を締めていましたが、マンドリンの踊りなど、ジュリエットの友人たちとそのパートナーをつとめるクラシック系(トゥ・シューズで踊るダンサーとそのパートナーね)の人たちは、揃って小柄で、体つきも「バレエ学校生徒じゃないよね?」と思ってしまうほど寸が詰まった感じでした。

 吟遊詩人のヤサウイ・メルガリーエフ君は、カーニヴァルの道化もやってた人ですよね、たぶん。お顔は東洋人でした。踊りは丁寧にでしたが、やっぱり学校生徒のように生真面目というか、形はしっかり守ってるが、劇中の役を生きている感じじゃなかったです。はてな? 
 来週は「ジゼル」、さて?!

ニーナ・アナニアシビリ&
 グルジア国立バレエ
ロミオとジュリエット
 日時:2010年2月28日(日)15時開演
 会場:びわ湖ホール 大ホール

 音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
 振付:レオニード・ラヴロフスキー
 改訂振付:ミハイル・ラヴロフスキー
 改訂振付補佐:コルネーエフ、イワーノワ、ファジェーチェフ

 キャスト:
  ジュリエット:ニーナ・アナニアシビリ
  ロミオ:アンドレイ・ウヴァーロフ(ボリショイバレエ)

  ティボルト:イラクリ・バフターゼ
  キャピュレット卿:ユーリー・ソローキン
  キャピュレット卿夫人:ニーノ・オチアウーリ
  ジュリエットの乳母:タチヤーナ・バフターゼ
  パリス:ワシル・アフメテリ

  マキューシオ:岩田守弘(ボリショイバレエ)
  ジュリエットの友人:ラリ・カンデラキ
  吟遊詩人:ヤサウイ・メルガリーエフ
  ベンヴォーリオ:ゲオリギー・ムシヴェニエラーゼ

  ロレンス神父:パータ・チヒクヴィシヴィリ

 指揮:ダヴィド・ムケリア
 演奏:関西フィルハーモニー管弦楽団

 音楽はドラマの大切な語り部。指揮者の棒が語らせた演奏に拍手。弦と金管の重層的な鳴りが、たいそう気分を盛り上げてくれました。しっかりしてね、金管。

 今日の新発見はオルガン!
 バルコニーのシーン、序奏の後、ロミオの陰が闇をかすめる不穏な音の直前の部分でオルガン独奏が少し入ったところがよかったな〜。あのように聞かせられてはじめて、これは教会オルガンふうの旋律と和声だったのかな?と思い至り。

 舞台セットや衣装は、グルジアバレエ団のために、この国の技術者やアーティストがデザイン、製作したもののようでしたが、ラヴロフスキー・オリジナル版の舞台を今に伝えるものだったと思います。ボリショイやマリインスキーの舞台に引けを取らない衣装と何枚もの幕や台、道具を駆使して、場面転換をぬかりなく見せてくれました。

 ニーナのジュリエットは、冒頭こそ乳母とはしゃぐ少女像でしたが、キャピュレット家の宴会の場面から、もう乙女の決心ができておったかと。来年にはデビュー30年を迎えるニーナの、ごく真っ当で自然な造形じゃないかと思うな。踊りは盤石。

 ウヴァーロフのロミオは、これまたやっぱり、ミドルティーンのあんちゃんには見えず。また、原作のように年上の美女にキョロキョロ眼を奪われるなんてことは、あろうはずもない、とっても賢くていい子で、もう成人式だね!という感じ。彼のお芝居は古いVHSで見た、ボリショイのロミオみたいに古風なもので、それがまた似合うのだわ。

 というようなふたりによるロミジュリですから、そのパドドゥは完成されたものだけれど、もはや「伝統芸能」の域に達していました。「今日の舞台のケミストリー!」は望めなかったです。

 それでも今日、私はニーナが絶えずアグレッシヴに舞台を作ろうとするバレリーナなのだとわかる、ちょっとした出来事を見たと思いました。ニーナはパートナーや出演者、バレエ団全体に行き渡る包容力で公演を率いる人ですが、同時に芸術監督でもありますから。そう、踊る芸術監督のパフォーマンス(仕事)を、見ることができたんです。

 私は今日のバルコニーのパドドゥの途中、いつまでたっても疾走感が足らんかな〜と感じていました。ちょうどそのとき、ニーナもそう感じたのではないでしょうか。にわかにムーヴメントが変わったように見えました。腕や脚を上げたり姿勢を変えたりといった動きを、ブンッと少し乱暴に見えるほど勢いよくしはじめたのです。ふたりの動きがわずかにギクシャクしはじめたように感じました。彼女ほどのバレリーナらしくないな〜と思っていたところ、アラベスクの軸足がズルッと、上げた脚の勢いにとられて後ろへ滑りました。見ていてドキッとしました。でもさすが、ウヴァーロフのサポートです。崩れたのはニーナの軸足のつま先の位置だけ。その位置が動いただけでした。ニーナの姿勢も、サポートするウヴァーロフも、全然崩れていません。その後の動きは、丁寧に(慎重に?)最後までおさまりました。

 バルコニーのシーンに足りないものを感じ、それを何とかしようとしたニーナ。私には、そう見えました。

 物語は粛々と進み、それ以降は想定の範囲内のドラマが見られました。

 ひとつ、意外な発見は、パリス役のワシル・アフメテリとニーナの調和。懐中にロレンス神父の秘薬をしのばせ、決意を隠してパリスの手を取り、「婚約します」と会話する短いパドドゥ。ジュリエットの心情はもちろん伝わってくるけれど、役者として並び立つふたりのトーンが、なんともしっくりよく合っているというか…。いや〜、このふたりのロミジュリも、見たくなりましたよ、ほんとに!
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