子どもの頃は、数学も理科も全くの苦手科目だったにも関わらず、サイエンスな読み物には興味津々だった。昆虫図鑑も植物図鑑も好きだった。
流星群が見られる夜には、深夜でも空が広がる場所まで一人で出かけた。今なら未成年者深夜徘徊で補導されそうだが、当時はおまわりさんもいないような田舎だったので、難を逃れた。月食や日蝕のニュースには、大興奮した。
それだけ天体が好きだったのに、星座を見つけるのも、星の位置や名前を覚えるのも、天体分野のテストだってまるでダメダメ。ひたすらいたずらに興奮するだけで、知識を自分の物にしようという意欲がまるでないのである。何の自慢にもならない。
ということを思い出したのは、今日の仕事が廃棄本のバーコード剥がしだったからである。ちょうど自然科学関係の本の山だったのだ。日本人はどこから来たのか、そもそも日本の成り立ちはどのようなものだったのか、とか、月に関するさまざまなアプローチを中学生にもわかりやすく様々な角度から説明した本とか、思わず読みふけりたくなるようなのが、たち現われて来る。困る。なんてやりづらい仕事なんだ。
そのなかでも10年以上前の話なのに、今頃大ショックを受けてしまった本があった。
木星と彗星が1994年に衝突した、という事実である。えー、そんなこと、全然知らなかったよー! こんなデカイ話、どうして知らなかったんだろう・・・天文学者さんは大興奮、大感激したらしい。
こんなデカイ話を知らなかったのは、その1ヶ月前に誕生した新生児Kちゃんのお世話に明け暮れていたので、ほとんど世間と隔絶した壮絶な日常に突っ込んでいたからだった。そういえば彼女が生まれた頃には、松本サリン事件が勃発しており、テレビで仰向きのザリガニのビジュアルを良く見ていた記憶だけはある。
昔の人は星の動きを見て、未来を占ったりしたらしいから、木星の不吉な輝きに不穏なものを読み取れたのかもしれない。
地球からは衝突の様子は位置的に見えなかったけれど、かなり大きな核爆発がおこり、キノコ雲が発生している様子が観測されたらしい。恐るべきエネルギーである。
空の上でも私(たち)の知らないデカイことが、きっといっぱいあるんだろうな。もちろん地上でなんか、私たちに知らされないデカイことが各国にそれぞれいっぱいあるんだろうな。それもきっと知らない方が幸せだったりすることが。

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