高校生の夏休みに『枕草子』の訳本を読んで爆笑したことがあった。
昨日は珍しく時間制限がなく図書館に寄れたので、どんな文章に爆笑したのか思い出すために、ネット検索と併用して『枕草子』をひもといてみた。
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ねぶたしと思ひて伏したるに、蚊(か)の細声にわびしげに名のりて、顔のほどに飛びありく。羽風(はかぜ)さへその身のほどにあるこそいと憎けれ。
ー枕草子 二十六段 にくきもの よりー
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これだけである。
たどり着いてみれば、拍子抜けする程短かった。さすが「箸がころげてもおかしい」年齢というわけである。
しかし久々に『枕草子』を読んだら他にも笑える箇所点在で、楽しい閲覧時間を持つ事が出来た。
が、千年後、ひとりの随筆の名手の手によって、この箇所はもう少し長いエッセイに生まれ変わった。
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蚊は愉快犯である。
しかもかなりひねくれた、タチのわるい愉快犯だ。
何をやるにしても、普通のやり方では面白くないのだ。
人を不愉快にさせ、激怒させ、絶望させて喜ぶ。
このことは、人類ならば誰でも知っていることだ。
ー『ずいぶんなおねだり』東海林さだお/著 文春文庫
「夏休み昆虫観察日記 二」より「蚊」ー
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いいたいことはほぼ一緒なのだが、この調子で5ページあるので「枕草子」よりは長時間楽しめる。
学生の頃、鳥山明氏の『Dr.スランプ』で知ったのだが、蚊を名古屋弁で「ひゃーぶんぶ」というらしい。あまりに即物的な固有名詞だったので、笑いすぎてしばらくページがめくれなかった事があったっけ。いや、むしろ『枕草子』の蚊の世界を体現している、ある意味みやびな固有名詞というべきかも。
先日夫・H氏がホテイアオイを取りに行こうとした話を書いたが、その前に彼は近くの池でメダカ大の「ワカサギ」(? 本当にワカサギかどうかはやや怪しい。だがH氏はそう断定している)を数匹ゲットしてきた。
それというのも、ついこの間まで、にくらしい愉快犯の子どもたちがわんさかと、我家のポンプ付き雨水貯水桶で楽しそうに腰を振りながら上下していたからだ。ことに蚊の好む!?B型の血液を有するH氏にとっては、ゆゆしき事態である。よって「成敗!」することにした。
「ワカサギ」(?)数匹は、偉大だった。あっという間に、膨大なボウフラたちを平らげてしまった。現在ボウフラたちは影も形もない。
若き英雄たちには、「サー・グレイト・ワカサギ(?)」の称号を与えたいと思う。

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