子どもの頃、「森永チョコボール」のあけ口のくちばしに「金のエンゼル」を求めて、せっせと「森永のチョコボール」を購入した。せっせと買っただけあって、一度だけ「金のエンゼル」のくちばしを当ててそれを郵送したら、待ちくたびれた頃『おもちゃの缶詰』が送られて来た。
その頃流行っていたアニメの絵柄のついた(「グズラ」だったか「ガボテン島」だったか、それとも他の何だったかは残念ながら忘れてしまった)、パインや白桃缶くらいの大きさの缶詰だった。
その頃といえば、ひとりで家にいる時には、テレビの他は「退屈しのぎに百科事典でもみるか〜」、というくらい娯楽がなかったので、『おもちゃの缶詰』が送られて来るというのは、都会(=テレビの世界)の匂いがする一大事件だった。
今思えば、プラスチックの竹とんぼとか、こまごましたおおぶりのオマケみたいなおもちゃの詰め合わせだったが、当時は宝物のように大切にしまい込んだ。大切にしすぎたからか、しまい込みすぎたためか、ほどなくどこかへ消え失せて行った。
その後「銀のエンゼル」を根気よく5枚集めて『おもちゃの缶詰』パート2にまでこぎ着けたが、1回目のファンタジックな思い入れはすでになかった。
2度目の「缶詰オープン」は気の抜けたサイダーのように盛り上がらなかった。オープン後中味を見て、さらに気は抜けていった。
あれだけ根気よく「銀のエンゼル」を集めたのに、最初の中味よりずっとランクダウンしていた(ような気がする。単に私が成長しただけだったのかもしれないが)。粘り負け、という言葉が胸の中をかすめた。
長い月日が流れ、「トドの缶詰」(北海道産)や「さばカレーの缶詰」(テレビドラマ「コーチ」で重要アイテムとなり、一時流行った)などの缶詰遍歴を経て、昨年久しぶりに私の胸をときめかせる「幻の缶詰」のウワサを知った。ついに入手することはなかったのだけれど。
カルビーの「ポテトチップス」や明治の「カール」など、スナック類には縁遠い生活をしているので、その辺のお菓子事情には疎遠だったりする。だから、確か「広告批評」紙上で見たのが最初だった。「暴君ハバネロ」のことである。
当時(といっても去年)東京を征服する勢いだった(らしい)『暴君ハバネロ』を展開する「東ハト」が、暴君らしからぬ温情を示し、「暴君コレクション応募者全員プレゼント」を企画した。
しかしそこは暴君である。みすみす「全員プレゼント」なんていう甘い誘いをするからには、当たり前のようにきっちりトラップも作ってある。
それが「毎回抽選で1名様に送りつけられる『屈辱のハズレ缶』」だ。
「暴君ハバネロ」よりのメッセージはこうだ。
「ハズレた者は屈辱のハズレ缶をうけとるがいい」。
追い打ちをかけるかのように、彼の頭上には
「無念!」の文字が。
他にも「暴君ハバネロとゆく悪夢のメキシコ6日間の旅プレゼント」というのもあり、「死者の日」(日本で言えばお盆のようなものか?ハロウィンの変形バージョンかも)を狙い撃ちした骸骨だらけのツアーだ。こちらも非常に魅力的である。
これらは2005年の
「暴君フェスタ」なので、残念ながらすでに終了済なのだが、私の中で今もくすぶる「暴君ハバネロ」への思いを断ち切るために、今回あえて書いてみた次第である。

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