先日、右にリンクしてある「蕃茄庵日録」の庵主、蕃茄さんにおすすめ絵本をご紹介いただいたので、読んでみることにした。
まずは近くの児童書専門店で立ち読みを、と思ったのだけれど、充分な時間が取れなかったのと、猛烈な金欠だったので(もしかしてうっかり買ってしまったら)経済的な危険を感じ計画を変更した。
こういうときには、まず図書館に行く。しかし検索をしても出て来ず、リクエストをして何日か待ってみる。
メールで「本、きました」の連絡が入り、日曜の仕事帰りに閉館間際ぎりぎりに飛び込み、セーフで受け取る事が出来た。やれやれ。
『ヤンヤンいちばへいく』 周翔・作/文妹・訳 ポプラ社 1300円
http://www.bk1.co.jp/product/2681374
落ち着いた渋い色調の表紙に、「あ、こんな渋めのパステルもってたな」と、まずはつまらないことを思い出した。
内容は中国の町の子ヤンヤンがおばあちゃんの誕生日を祝う為に、田舎のおばあちゃんの家に来て、伯母さんと一緒にお祝いの準備の買い物をするため市場にいく、というもの。タイトルのまんまだ。
セザンヌっぽい色調で、人で溢れる中国の市場をややロングのカメラワーク?で描いている、ドキュメンタリータッチの絵本だ。
ところで私は中国へは行ったことがないのだけれど、ひどく懐かしい思いに浸った。それは「この感じは、知ってる」から。
子どもの頃に「市場」には行ったこともないし、中国の習慣や生活文化は知らないけれど、とにかく懐かしい。子どもの頃の似たような思い出が、読み終わった瞬間から、ぽろぽろとこぼれ出て来るからだ。
大晦日に商店街へ行き、お正月の食材を買い込んだ事。
昔は少なくとも三日間はお店がお休みだったので、かなりの危機感を持って食材(母担当)およびお菓子(私担当)を買い込んだ。混雑のなか、大量の食材、およびおやつが入ったカゴを持ち、長いレジ待ちの列に並んだ。
大晦日は当時「非常事態」なので、おやつの量にセーブがかからず大変うれしかったのを憶えている。あのときは人ごみも行列もなんのその、だった。今ならとうてい無理かもしれない。
食品以外のいろんなお正月用品を売っているところもあった。こちらは父に付いて行った。赤や白の玉が出る回すタイプのガラポンくじ引きなどがあり、ちょっと大きい賞がでると、係のおじさんが握りしめた鐘を、がらんがらんと鳴らした。私は出した事ないけどね。
我が家では、子どもへのお年玉は「物」で与えることになっていた。もしかしたら他の家でもそうだったのかもしれない。というのも、大晦日の商店街では、おもちゃ屋さんがなかったはずなのに、おもちゃも売っていたからだ。
お年玉として買ってもらったものでインパクトがあるのは、迷彩色の戦車。出口から頭を出すヘルメットをかぶった兵隊さんがついており(もちろん頭だけ)、タイヤを何度か地べたで回して勢いを付け走らせるタイプのおもちゃだった。走るとき、なんと戦車の砲筒から火花が出るのだ!
「こんな恐ろしいもん、要らん」とついに言い出せず、父親だけが喜んで走らせていたような記憶が・・・。
他にもジャングル大帝のジグソーパズルとか、「オバケのQ太郎」の分厚いマンガとか、お年玉として買ってもらったものを芋蔓式に思い出して行く。
大晦日だけではなく、お祭りで母の実家へ泊まりがけで行った事や、隣の家の養鶏小屋を見に行った事なんかも、次々とたっぷりリアルに思い出してしまった。
そんな自分のほとんど忘れ去っていた懐かしい記憶が、どんどん甦って来る。自分の脳内近過去に遡れるタイムマシンのような絵本なのである。

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