柿の木の下に数年前植えたホタルブクロの花が咲いて来た。
先週、娘のKちゃんと、本屋さんでマンガを買った帰りに、家から車で5分の神社の近くの川辺に蛍を見に行った。1カ所に2、3匹が小さく冷たい光を点滅させて、ふわふわと飛んでいる。あれがもっと大きければ「鬼火」とかって呼ばれるんだろうな、と思うようなあてどない飛び様だった。
数がすくないのは「これから」だからか「終盤」だからか、わからなかったので、とにかくも心置きなくゆっくりと見る。こんな蛍の様子を、清少納言が書いてたな、「枕草子」で。こういうのも、風情があっていいって。
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夏は、夜。月の頃はさらなり。闇もなほ。螢の多く飛び違ひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。
-清少納言『枕草子』より引用。
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去年はホタルブクロを家から持って来て、タイミングよくやってきたホタルを花の中に入れたら、エミール・ガレのランプシェードみたいに幻想的できれいだった。伊達に「ホタルブクロ」という名前がついているわけじゃないことが実感出来た。
で、昨日の日曜日はKちゃんは隣町の友達の家に遊びに行き、夕方迎えに行くと、「今夜、みんなでウチの近くの蛍、見に行っていい?」「!?」
また突然に。でも蛍は期間限定だから、すぐ行動しないとね。オッケー。
夜、ふたたび我家に集合して、6年女子仲良しトリオ、Hちゃん、Mちゃん、Kちゃんのにぎやかな笑い声が響く。遊びに行った先のお母さんも一緒に暗くなってきたので出かける事にする。
ラッキーなことに先日の蛍は「これから」の方だったらしく、あれより3倍くらいに増えて、お客さまがたは大喜び!
「私、めっちゃテンション高いねん! Kちゃん、なんで高ないの?」
「私、こないだ見たばっかりやし。それに毎年みてるもん」
「へえ〜、私なんか、いままでで2回か3回や」
街灯は橋までいかないとないので、川沿いの両側の細い道は、かなり暗い。
「きゃー、あれ、なになに? 猫が道で死んでるみたい!!」
沈黙が挟まれ、ビビる子どもたちだったが、おそるおそる携帯の光で照らせば、葛の葉が道まではみ出しているだけだった。
「なーーんやー! ぎゃはははー」賑やかさが戻って来る。ヒバリのように、おしゃべりが止まらない。
「写真とろー、蛍。」
「映らへんで。こないだお母さんが撮らはったけど、フラッシュが光って蛍の光が映らへんねん」「あ、ほんまや。携帯でもとれへんわ」
「あー、満月や!」「私、電灯やと思ってたわー」「あんなとこに、電灯なんかあるわけないやろー」「ぎゃはははははー」
すっかり暗くなる8時過ぎには、適度に人も増えてきた。皆さん、蛍の見頃をよくご存知で。最後にもう一度橋の上から小川の上を飛び交う蛍を見て、車まで戻る。
今日、学校から帰って来たKちゃん、
「今日なー、Hちゃん、5回も『昨日はありがとー(蛍のいる場所教えてくれて)』てゆわはったねん。よっぽどうれしかったんやな」
めでたし、めでたし。


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