家が商売屋をしていなくても縁起物として玄関の外に「信楽のたぬき」を置いている家は多い。「たぬき」だけではなく、「無事帰る」よう同じく信楽の「カエル」の置物も人気があるし、シーサーを門柱に置く家も見かけるようになった。シーサーについては信楽でなく、もちろん沖縄土産であろう。
もっとも最近の「信楽のたぬき」は可愛いのとバリエーションこそ豊かだが、「狸の狸による狸のための」理念ある姿形や味わいに乏しい。
が、たまに「これこそ『信楽のたぬき』である!」という逸品が、ひっそりと古い家屋や昔ながらの店頭に佇んでいる。これを「ヴィンテージたぬき」と命名し、出会いに感謝している。
これは行きつけのお医者さんの向かいのお家のヴィンテージもの。長年、愛を育んでいるヴィンテージ1号だが、いつでも裏切る用意はできている、という表情に、油断のできない性格を感じる。だが、困った事にそこがまた魅力なのである。なぜか隣に使われない水道がある。このミスマッチ加減も、また楽しからずや、なのだ。


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