久しぶりに新聞小説を読んでいる。
老いた父一人、中年も終盤の息子一人の二人暮らし。この友達もなく何の展望もなかった息子が恋をした。どこかの映画のようだが、相手はウクレレ教室の美人教師である。奇跡のように成就するかにみえた恋だったが、なんと彼女は息子から大金を巻き上げたあげく、ホストと駆け落ちして逃げた。意気消沈する息子を怪しみ、問いつめる父。追いつめられ大金を借金した事を打ち明けたとたん、倒れる年老いた父親・・・。
新聞小説? いえ、新聞小説の姿を借りたCMである。その名も
『金鳥小説 ふらふら』。ふらふらしたたよりない息子(岸部)とフラダンスをかけてある。それに「蚊に効くカトリス」の効果でペースダウンする蚊にも・・・。
しかしCMにしては、新聞の下方にひっそりといかにも地味に佇んでいる。とてもCMとは思えない。イラストの代わりに俳優・大滝秀治/岸部一徳(両方もしくはどちらかひとり)のモノクロ写真が細長い新聞小説枠の中に差し込まれる。
それにしても目立たない。普通の新聞小説よりはるかに地味である。まるで人目を忍ぶかのように、タイトルも、字体やポイントも、写真も、すべて控えめ。そしてこの枠内のメインである「蚊に効くカトリス」の写真とCMも、CMにあるまじき謙虚さである。なんなんだ、これは。
もちろん「金鳥」の常人には計り知れない深い陰謀であることは、間違いない。
このじみーなじみーなCMは、平行してABCラジオで放送され、
ホームページでもラジオ版、新聞版共に公開されている。
この同じコンビのつまらないテレビCMをみて、「金鳥、どうした。やけくそなのか?終わってしまったのか?」と気を揉んだのが、ばかみたいだった。おそるべし、金鳥の深謀遠慮。
(追記) 翌日トイレで気がついたが、地味で活字とラジオというアナログな組み合わせは「レトロなメディアミックスCM展開作戦」であることにやっと気づいた。
再度繰り返す。おそるべし、金鳥の深謀遠慮。


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