お兄ちゃんが小学生までの間は、毎夏休みになると、どこかへ出かけた。
隣県の三重にある伊勢・志摩には2、3度でかけた。朝早めに車で出発すれば10時くらいに到着し、一泊すればゆっくりと過ごせる。
もっとも車で出かけると、ナビゲーターとドライバーとの相性は最悪なので夫婦間に暗雲立ちこめてしまう。家族の親睦を深めるべき旅行が家にいればめったにない亀裂を生むことがあるので、私に限っては土地勘のないところへは、なるべく公共機関の乗り物で出向きたい。
しかも車の中は退屈だ。特に下の子(当時は幼児)は退屈に弱かった。
そこでドライブインに立寄り、退屈しのぎになる「シールブック」なるものを購入する。小さなノートに「動物」「魚」などのテーマの取り外し自在なシールを貼っていって、しばらくは大人しく遊んでくれる。
あとで見せてもらうと、わざと魚を逆さまにしたり、手をつないでいたりする。独自に頭の中で物語を溢れさせている様で、遊んだ後のシールブックをみて、大人たちは、唸ったり笑ったりしていた。
シールブックを卒業して小学生になると、自分で作ったお笑いな話を繰り出してくれるようになる。
お兄ちゃんが当時ハマりまくっていた野球ネタで
「一番ピッチャー『白雪姫』。二番キャッチャー『鏡』。三番ライト『魔女』・・・」
みたいなことを言って父母にウケていたら、負けじと「王子と姫ネタ」で攻めて来た。
・・・王子さまは一目でお姫様を好きになり、結婚することにしました。
ところが結婚式の最中に『その結婚、まってー!』と別のお姫様が走ってきます。『王子さま、そのお姫様は、・・・実は・・・「おかま」よっ!』。『ちくしょー!もう少しだったのに!』と逃げて行く偽お姫様。
『ありがとう、あなたのおかげで危ない所を助かりました。お礼にあなたと結婚します』
『うれしい、王子さま!』
ところが、またもや、『まって!』と声がかかります。
『そのお姫様は、・・・タヌキよ!』
『ばれたかー! ポンポコ!』悔しがるタヌキ・・・
これが低学年の頃だった。
最近本人に聞いたばかりだが、Kちゃんは春の修学旅行でも、遅くまで起きている女子の部屋で、口からでまかせに「ラブコメディ」をつくり語ってウケまくったらしい。その後、口述したのを思い出しながら書いたそうだが、やはりしゃべりのライブの面白さと熱気には遠く及ばなかったそうだ。
Kちゃんには「女子おわらい版ホメロス」の称号を与えたい、と思う母であった。

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