イージーリスニングの大御所でフランスの指揮者、ポール・モーリアさんが、急性白血病のため、11月3日、病院で逝去された。81歳だったが、突然の死だった。
私が生まれて初めて買った洋楽のLPレコードは、ポール・モーリア・グランド・オーケストラのアルバム『アテンション!ポール・モーリア』だった。『恋はみずいろ』『シバの女王』『ヘイ・ジュード』で始まり、『花のサンフランシスコ』でフィニッシュになる。
なんでポール・モーリアなのか。
中学校のお昼の掃除の時間に、決まってこのアルバムがかけられていて、引っかかってくるものがあったらしい。駅前のスーパーの4Fのレコード売り場で必死で探して買った。オレンジの♥(ハート)がいっぱいの中にポール・モーリアの顔写真がデーンと乗っかっている。お世辞にもいいジャケットとはいえない。が大喜びで購入し、かなりよく聴いた。
当時はイージーリスニングの全盛で、ラジオをつければ必ず誰かがリクエストしたり選曲の中に入っていたりして、よく流れていた。だから、いまだに当時のイージーリスニングの曲が、からだに染み付いている気がするほどだ。脳みそをONしたら、頭の中できっちり響いてくるくらいに。
私のフランス・イメージを形作ったのは、ルパンとユゴーとデュマの小説、シャンソンとポール・モーリア、そしてミッシェル・ポルナレフである。
今となっては、マジックのBGMとして定着してしまった『オリーブの首飾り』も、ポール・モーリア・グランド・オーケストラのヒット曲である。
だが、私自身はこの曲を聴くと、とてもテンションが下がってしまう。たぶん
盲腸で入院していた頃、よくラジオから流れていたからではないかと思われる。「ツライ思い出(笑)」と二人三脚で耳から脳へやって来るからだろう。
ポール・モーリアを聴くと、中学生の自分に戻る気がする。過去の子ども時代と決別した気持。未来をまだ実感として感じられない不安感。
中学生の頃には、だから「今」しかなかった気がする。「今」がとても大切だった。だからこそ、とてもリアルに「この瞬間」の気持が感じられる。うれしくハッピーな気持はまるごとピュアに輝いて、切なく遣る瀬ない気持は深く透き通って、辛い事態には果てなく落ちるような重い心になった。
人生で最初の危ない橋を渡る時期なのかもしれない。
その頃のめり込んでいた北杜夫さんの『どくとるマンボウ青春記』に「自殺するならとにかく三十歳まで生きてみろ」と書いてあったので「三十までは生きる」ことにしよう、と決心したっけ。
でも、今思うと三十は短い、やっぱり四十歳までは生きなきゃダメでしょと思っている。もっとも私のことだからこの先、四十なんてひよっこ、五十なんて小娘、六十なんて・・・と必ずいいそうである。
大器は晩成なのである(笑)
中学時代の甦る思い出とともに、ご冥福をお祈りします、ポール・モーリアさま。

休耕地につくられたコスモス畑。天国のポール・モーリアさまに捧げます。

0