いとうせいこうと奥泉光の『文芸漫談 笑うブンガク入門』
(渡部直己:脚注) 集英社 をおととい読了。
『漫談』というタイトルどおり、いぶし銀のようなボケ方をする奥泉光に、いとうせいこうのいつもながらのツッコミが冴えるブンガク的漫才なのだが、内容がなかなか高度なので(哲学、心理学、もちろん文学に話が及ぶ)文芸評論家の渡部先生の脚注が付く。
意外に!?難解で、ついて行くのに息切れしそうなところも多々あったけれど、サービス精神のカタマリのおふたりなので、随所に爆笑なエピソードや挿話が入るが、それは脱線ではなくて、けっこうキモの部分だったりする。あんまり面白いので、気に入った箇所をコンビニに走りコピーした。
奥泉さんは、どのように日常的に作家の仕事をしているのか(あるいは、どのようなスケジュールで一日を過ごされているのか)という部分。
夏目漱石が写生文について語る文章を、かつては「けっ」と思っていた奥泉さんが、保育園に通うお子さんの学芸会を観て以降、いかにして夏目漱石の同じ言葉に、深く納得するようになったのかという部分。
大学院でヘブライ語で旧約聖書を読んだらしい奥泉さんが、『ヨブ記』のシュールな素晴らしさを開陳する部分。
アメリカ人で日本通なジェイくんが、芭蕉の俳句を解説する部分。
他に田山花袋の『蒲団』や国木田独歩の『武蔵野』が、いかに爆笑な小説であるかが語られていたりもするのだ。
はからずも奥泉さんが言った「(小説にとっても、人生にとっても)『ユーモア』というのは人間の持っている唯一の武器」という言葉にいたく共感する。
虚無的でアイロニカルな人生を、慈しみ肯定したときにこそ、ユーモアが発動する。アイロニーは二重性を帯びたもので、「世界を二重化して見る事が、元気の素なんだ」という、ふたりの着地点に、うんうんと頷き、だから東海林さだおのエッセイを笑いながら読むと、元気になるのかも?と、ふと思う。
昨日の読書会の課題本は東海林さだおの「まるかじりシリーズ」(ならなんでも)だったので、未消化ながらも、何かしらつながっているものを感じたのでした。

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