ウクライナのキエフから3年ぶりに来日したタラス・シェフチェンコ記念ウクライナ国立バレエ団(日本公演での通称はキエフ バレエ団)。そのびわ湖ホール公演「白鳥の湖」を観てきました。
いい舞台でした。道化がいなくて少しもの足りなかったけれど、ダンサーと管弦楽団のロシア系らしいパフォーマンスを観て、聴いて、愉しかったです。
日時:2007年12月8日(土)
開演:15:00
会場:びわ湖ホール 大ホール
《キャスト》
オデット・オディール:ナタリヤ・ドムラチェワ
ジークフリート王子:セルギイ・シドルスキー
ロットバルト:ルスラン・ベンツィアノフ
王妃:リュトミーラ・メーリニク
家庭教師:オレグ・トカリ
小さな白鳥:
ナタリヤ・コストグリズ
オクサーナ・シーラ
ナタリヤ・ソルダテンコ
ユリヤ・シュマク
パドトロワ:コスチャンチン・ポジャルニツキー 他2名
大きな白鳥:田北志のぶ 他3名
花嫁候補:田北志のぶ 他3名
入口で配られたキャスト表には、大きな白鳥、花嫁候補、パドトロワに以下のソリスト4名の名前が書き連ねられていました。私はプログラムを買わなかったため、顔写真と照合できないので、この日の舞台に出演したダンサーが特定できませんでした。
4人のソリスト:
オリガ・キフィヤク
テチヤナ・ロゾワ
ユリヤ・トランダシル
イリーナ・ボリソワ
ヴェニスの踊り
菅野英男(ソリストは男性のみ)
《演奏》ウクライナ国立歌劇場管弦楽団
《指揮》ヴォロディミル・コジュハル
《改訂振付》ワレーリー・コフトゥン
舞台装置はシンプルで必要最低限、衣装は光り物をあしらった王侯貴族やキャラクテールのコスチュームが新しそう。
そのシンプルな舞台装置と、踊らないダンサーはむやみに舞台に立たせないという振付演出のため、フロアが広々としていささか空間を持て余している(スカスカで寂しい)と感じる場面もありました。白鳥のコールドは、人数が少なめでした。縦2列に並んだときはよいのですが、横長に並んだときは誰もいない空間が気になりました。
コール・ド・バレエの踊りはよく揃っていたと思います。腕の使い方がペテルブルク派とは少し違い、きれいなのだけれど、動きの柔らかさと締めの甘さを感じました。厳格に定められたポジションにおさまったとき、カッチリした緊張感が欲しいと思いました。
大きな白鳥にキャスティングされていた、ひとりのバレリーナが、そんな私の欲求を満たしてくれていたと思います。名前が特定できなくて残念です。
主役のドムラチェワは小柄で運動能力に優れたバレリーナのようでしたが、悲劇的な陰翳と白鳥たちを率いるほどの存在感は、まだ表現できていませんでした。アダージョやマイムはムーヴメントが一本調子、コーダでの大きな羽ばたきとパッセの繰返しは、せかせかしている。王子役のシドルスキーとのタイミングが合わないため、ミスが散見されましたし、2幕の湖畔の場面はかなり緊張を強いられたようです。
しかし、教則本通りきっちり演技して王子をケムに巻いたオディールのグランパドドゥ(グランフェッテではトリプルも披露!)は生き生きと演じ、踊りも安定していました。最後の高笑い(悪役だけど可愛い♪)もなかなか立派。その後終幕のオデットは、落ち着いて演技していました。
彼女は、基本的には「善」が存在の大部分を占めるバレリーナなのでしょう。1幕のオデットも、技術的な不安が解消したら、もっとしっかり気持ちを作りこんで舞台に立てるようになるのではないかと思います。
キエフバレエ団は長身でスタイルがきれいな男性ダンサーが揃っていました。ジークフリート、トロワ、ロットバルトなどのソリストは皆、高くてエクステンションがきれいなジュテを惜しみなく飛んでみせてくれました。
特に、シドルスキーは堂々ジークフリートを快演。憂愁の王子ではなく、統治者として優れた才能と美しさを兼ね備えた大人の王子様という感じ。踊りもきれいだしね。眠りやライモンダも観たかったです。
3幕の舞踏会では、ロットバルトにもソロがありました。それから、チャルダーシュやマズルカといった東欧民族舞踏は、やっぱりロシア系のバレエ団で観るのが一番です。音楽に合わせた動きとポーズが、真似事ではない本場のかっこよさではまっています。
また、オーケストラは劇場の管弦楽団で、しかも白鳥の湖ということもあり、ソリストに多少不安定なところはあったものの、合奏は盛大で心地よかったです。フィナーレ後、幕が下りたらすぐ、金管パートが満足げに握手なんぞ交わしておりました。オーケストラに比べて舞台がちょっと温度低めではありましたが、長期のロードではこんなものでしょうか。
この日の私的ベストパフォーマンスはジークフリートのステージマナーとオケの金管大団円でした。

0