小宮山量平さん講演
■新刊出版記念 “立ち止まって考える”勇気を
9月22日、エディターズ・ミュージアム編集者講座vol.5として、上田駅前の「エディターズミュージアム 小宮山量平の編集室」で、小宮山さんの最新刊『地には豊かな種子を』の出版を記念する講座が開かれました。
上田演劇塾の共催で、同塾の指導に当たる俳優の伊藤巴子さんがゲストとして参加。同塾の子どもたちを含む約80人が、両氏の話に耳を傾けました。
伊藤さんは、マルシャークの名作「森は生きている」の主役を演じ続けたことで知られ、この日のテーマは「トルストイとマルシャークからの贈りもの」。
小宮山さんは、「日本は、大きな病気にかかっている。私の新刊は、その病をどうしたら乗り越えられるかに心を砕き記したつもり。病の原因は、どういう時代をどのように歩いているかを、見過ごしてきたことにある。私たちは今、立ちどまって考えなければならない」とし、そうした警鐘を鳴らした先達として、トルストイ、マーク・トウェイン、マルシャークらの名を挙げました。
「豊かな種子を播くこと―若い人たちに伝えていこうという努力は先人たちによって続けられてきたが、今、何かがずれている」「子どもに届けられる物語は、“こうして幸せになりました”という類型的なものが多いが、マルシャークの『森は生きている』(原作『12の月の物語』)では、さすがに王子様は現れない」「20世紀を経た私たちは、“ヒューマニズムが本当に生きる余地はあるのか”をテーマに、本づくりに取り組まなければ」と語りました。
伊藤さんは「森は生きている」の1500回を超える公演で地方を回ったと話し、「つらい旅だったが、子どもたちから寄せられる手紙で、彼らにとっては一生に1回の大切な出会いであると知った」「私は子どもたちに支えられて舞台を続けられたが、その子どもたちを育み支えるのは私たち大人。今日、小宮山先生の話でそのことを改めて教えられた」と話しました。
また参加した子どもたちに、「ここにある本は自然にできたのではなく、ここにいる90歳の小宮山さんがつくったんですよ。いつかまたここに来て、手に取って読んでほしい。せっかくの、こんな素晴らしい空間を生かしていってほしい」と呼びかけました。
<週刊上田掲載記事より>