週間上田19年3月3日(土)掲載記事より
上田駅前のエディターズミュージアムでこのほど、”小さいものの視座”をテーマにした
信州沖縄塾(伊波敏男塾長)の連続講座第1回が開かれ、作家・編集者の小宮山量平さんが
「灰谷健次郎さんと沖縄」と題して講演しました。
信州沖縄塾の連続講座第1回
「灰谷健次郎さんと沖縄」
小宮山量平さん講演
灰谷さんは17年間勤めた小学校教師を72年に退職し、東南アジアや沖縄を放浪した後に
名作「兎の眼」を、続いて沖縄を題材にした「太陽の子」を小宮山さんが創業した理論社から出版。その後渡嘉敷島に移住するなど、昨年11月に亡くなるまで生涯を通して沖縄を見つめ続けました。
小宮山さんは、教師時代の灰谷さんが児童詩誌「きりん」に子どもたちの詩を寄せていたことや退職後の放浪などについて語り、兄の自死や沖縄での思索などを記した「兎の眼」初版の著者あとがきを声を詰まらせながら朗読。同署がこれらの遍歴の果てに生れたことに言及し、
「彼は沖縄と深く結びついていたのです」。また「彼のなかには人間の本性としての”孤独”と流浪への志向があった」「流浪はひとを育む。しかし到達点としてはならない。さまようこと自体に意味があるのです」と話しました。
そして、マニュアル化された”到達点”を追い求める日本の教育と、親の善意の「えらくなれ」という言葉に子は従属させられ続け、今や「日本は重い病に冒されてしまった」。灰谷さんの教師時代、すでに教育の現場はその病のなかにあったが、「彼は流浪することで精神を健全に保つことができた」。沖縄は、戦いの島、基地の島という視座にとどまらず、私たちの心を開いてくれる場所であり、アジアと南方へと目を開かせてくれる窓でもあると語りました。
信州沖縄塾の連続講座はエディターズミュージアムと共催で、今後4月・6月・8月・10月に、アイヌ問題や対馬丸事件、基地問題などをテーマに開く予定です(会場も同じ)。