エディターズ・ミュージアム109 まどみちおさん 2014.11.15掲載
当エディターズ・ミュージアムスタッフの山嵜庸子さんが、地元紙「週刊上田」に『本の森に囲まれて−私の図書館修業時代』と題して連載をしている内容を、ご本人の承諾を得て転載しています。
まどみちおさんは104歳の天寿をまっとうした人です。
年譜を追う面白さから、ついつい回数を重ねましたが、これでは何年経っても書ききれるものではありません。
今回は、どうしても読んでいただきたい詩を紹介します。
ブドウのつゆ
私の中に おちてくる
ブドウの つゆの
この一しずくの あまずっぱさが
こんなに はるかな 光の尾をひくのは
そのはじめ
かみさまの 心の中に
生まれでた思いだからなのか
そして 私にたどりつくまでの
なんおく年間
そんなにまぶしい銀河の中を
めぐりめぐって いたからなのか
クモの糸よりも ほそい
一すじの せせらぎとして
ブドウの つゆの
この一しずくの あまずっぱさが
こんなにはるかな 光の尾をひいて
星がおちるように
私の中に きえていくのは
ブドウのつゆのひとしずくから宇宙に至るその広がりが、まどさんの感受性なのですね。
つぼ・T
つぼを 見ていると
しらぬまに
つぼの ぶんまで
いきを している
エディターズ・ミュージアム110 まどみちおさん 2014.11.22掲載
先ごろエディターズミュージアムで、「まどさん、ありがとう」と題した催しが開かれました。まどさんの詩の朗読、絵本の読み聞かせ、童謡を弦楽器に合わせて歌うなど、すべてまどさんづくしの多彩で豊かな内容でした。
保科千夏さんの澄んだソプラノの歌声を聴きながら、目で読む詩の場合、なるべくなら美しいとか清らかなとかそういういろいろな形容詞みたいなものを使いたくない。だけれども作曲されて歌われる場合には「清らかな」なんていうところがメロディに乗るとじつに清らかな感じになっちゃうんですよね≠ニ、まどさんが話していたことが、実感できたような気がしました。
歌われた童謡を聴きながら、かつてその歌を聞いたり歌った歳月が浮かび懐かしみました。また大好きな弦楽器の音色に頬がゆるみました。この日のチェロ奏者は室賀文子さん。ヴァイオリンは井出理恵さんでした。
エディターズミュージアム代表の荒井きぬ枝さんは初めから、「お互いの息づかいが感じられるほどの人数で」と企画しましたが、その通りの会となり、みなさん互いの顔もわかってよかったのでは。
そんななか、いつもミュージアムで「魔女おばさんのお話会」を開いている加々井美恵子さんと、やはり当地で朗読活動を続ける遠山弘子さんが、まどさんがお年寄りになってから創った詩などを朗読しました。