2019/1/16
日本出版クラブが月に一回発行していた会報「出版クラブだより」には、父の文章がたくさん遺されています。
≪2003年への出版人の声≫と題された「新春紙上名刺交換」に、父はこのような文章を寄せていました。
夢見る権利の擁護
いろいろな権利の中でいちばん大切なのは、基本的人権だの、プライバシーだの、そんな七面倒なものではなく、ひたすらに「夢見る権利」ではなかろうかと、86歳の今日ようやく気が付いた。思えば出版を生業としたのも、つまりは、夢見ること多き生涯を夢見つつ歩んできたからに違いあるまい。だからこそどんな本の出版にも心血を注ぎ得たのだろう。最近の出版不況は、この夢見る権利を奪い去ろうとしているようで、哀しい!(理論社顧問)
それから16年―――
出版不況は更に深刻です。
夢見るどころか、売れれば何でもありが横行する出版界の現況。
父のこの苦言は、今のこの国そのものへの苦言でもあるように、私には思えるのです。
『夢見る権利』を、この国は、私たちから、若者たちから、そして子どもたちから、奪い去ろうとしています。
「哀しい!」―――、父の声が聞こえます。
2019. 1.16 荒井 きぬ枝
投稿者: エディターズミュージアム
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