『牛乳びんの歌』(足立巻一著、須田剋太装丁・カット 1972年理論社刊)を読んでいます。
不安におびえる中で、人々の心が荒れています。
まっすぐなこどもたちの心に向き合いたい、あの「きりん」のこどもたちに会いたい、
そんな思いでこの本を手にとったのです。
帯にはこんなふうに記されています。 童詩雑誌“きりん”とこども詩人たちの詩と真実の世界 「きりん」のこどもたちの詩がちりばめられた一冊。
父がつけた付箋がところどころに残っています。
変色した付箋のあるそのページを開いてみます。講演のたびに父はそこにある詩を読み上げ、そして語っていました。
詩を読む父の声が聞こえてきます。 あそびましょ 小学校一年 すぎやま ときお なまえわすれたら 「あそびましょ」 で いいでしょ 足立巻一はこの詩に竹中郁さんのことばを添えています。 「こんな清らかなコトバは、天国からでもきこえてきはすまい。人間同士の信愛があってこそ、生まれてくるコトバだ。このこどもがこれを忘れないで大きくなれば、どんな人間になるだろう。 (後略) 父の付箋をたどります。読みながら「ふふふっ・・・・・」です。 あるいてこい 小学校一年 うらかわ ゆりこ うちのおとうちゃんは、
しんぶんよむとき
「しんぶん、あるいてこい」
といいます。
たばこのむとき
「たばこ、ひとりであるいてこい」
といいます。
そしたら
おかあちゃんが、とりにいきます。 しりたいねん 小学校三年 谷口 のり子 あたし
おとうちゃんと
おかあちゃんが
どうしてすきになったか
しりたいねん
それから
みあいか れんあいか
しりたいねん
それから
どうしてすきになったのに
けんかばっかりしてんのか
しりたいねん 子どもたちはお父さんが大好きなのです。お母さんが大好きです。
お父さんとお母さんが仲良くしているとうれしいんです。
そして、よく見ているんですね。
学校が休みになって、多くの子どもたちが家で過ごしています。
思いがけずお父さんも家で過ごさなければならない情況です。
突然変わってしまった環境の中で、DVや虐待が増えたという報道に、胸がしめつけられるのです。
こどもたちが心の作業をしていることを忘れないで下さい。
どうかこどもたちが傷つきませんように。
『せんせいけらいになれ』には灰谷さんの付箋が残っているかもしれません。朗読する灰谷さんの声が聞こえるような気がします。
ごんた(いたずらっこを灰谷さんはよくこう言ってました)のマコチンチンの詩を今日は最後に・・・・・。2020.4.15 荒井 きぬ枝
おとうちゃん
小学校二年 くろだ まこと
うちのおとうちゃんは
まっくろなふくやずぼんきとうけど
ばかにするな
おとうちゃんがおれへんかったら
こうば うごけへんぞ
くろいふくやずぼんきとうけど
きゅうりょうはたかいぞ
みんなばかにしやがると
しょうちせえへんぞ
ひらしゃいんとおもたらおおまちがいやぞ
おとうちゃんはくろいかおしとうから
みんなこわいとおもうやろうけど
あんがいこわいことないぞ
みんなのおとうちゃんよりやさしいぞ
4月13日は父の命日でした。ことしの城趾公園の桜です。
8年前は開花が遅くて、最後の桜を見せることができませんでした。