週刊上田記事より 本紹介
「自立的精神を求めて 季刊「理論」の時代」 小宮山量平・著
こぶし書房・刊 定価2940円(税込)
戦後の出版界を牽引した稀代の編集者で作家、小宮山量平さん(92歳)は、1947年(昭和22)の理論社創業とともに季刊「理論」を創刊。戦後思想界に一時代を画したこの雑誌は、53年7月の廃刊まで21号を数えました。小宮山さんは折にふれ、「理論」を自らの出版活動の原点として語ってきましたが、氏の蔵書などを収蔵し紹介する上田駅前のエディターズミュージアムには、GHQの検閲を受け半分近くに削られた創刊号とその校正本が展示されています。
本書は、小宮山さんへのインタビューと当時の執筆者・読者の寄稿などで、初期理論社時代に光を当てようという試み。
戦後次々と創刊された「○○評論」に対して、小宮山さんは「心臓のところに耳を押し付けて、日本が本当に言いたいことを、聞いてあげようというふうに考えた」、それが評論的ではなく理論的な生き方だと思ったと語ります。また「出版は戦いだ」との言葉があるが、それは「ことばの輝きを取り戻すことなんだ」とも。
巻末には理論社の61年までの単行本出版目録も掲載。四六判・252ページ。お求めはお近くの書店で。