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ユートピア(存在しない理想郷)について真面目に考えてみた
「ユートピア(utopia、理想郷)は、イギリスの思想家トマス・モアが1516年にラテン語で出版した著作、また同書に出てくる国家の名前。「無可有郷」とも。ユートピアは現実には決して存在しない理想的な社会として描かれ、その意図は現実の社会と対峙させることによって、現実への批判をおこなうことであった」(Wikipediaより)
(1)何が理想なんでしょう
引き続き、Wikipediaより。「ユートピアは500マイル×200マイルの巨大な三日月型の島にある。(中略)ユートピアでの生活は、共産主義国家のそれに似ている。住民はみな白くて美しい清潔な衣装を着け、財産を私有せず(貴金属、特に金は軽蔑され、後述する奴隷の足輪に使用されている)、必要なものがあるときには共同の倉庫のものを使う。人々は勤労の義務を有し、日頃は農業にいそしみ(労働時間は6時間)、空いた時間に芸術や科学研究を行うとしている。しかし、実際には着る衣装や食事や就寝の時間割まで細かく規定され、市民は安全を守る為相互に監視しあい、社会になじめないはぐれ者は奴隷にされるなど、現在の視点から見れば理想郷どころかディストピア(逆理想郷)とさえ言える内容となっている」。・・・こんなトコ、住みたくねーな。この国のボスは○ム・ジョンイ○か?
筆者の考えるユートピアはこんな感じ。
@ 基本的に機会均等、自由競争。当然、勝者も敗者もいる
A 皆最低限の義務は果たしている(納税・勤労・教育など)
B 努力すれば最低限の生活は保障される。敗者も再起可能
C 身体障害者や高齢者などのハンディがある人は公正に保護される
D 努力と才能があれば、経歴に関係なくどんな仕事にもつける(世襲はほとんどない)
E 貧富の差はあるが、最貧困層の出身でも努力と才能でいくらでも這い上がれる
F 人種差別・宗教対立がない
G 色んな価値観が共存している
H 犯罪集団が存在しない
I 戦争、天災、疫病、犯罪、事故がゼロではない(緊張感がほどほどにある)
J 平均寿命は80歳くらい、みんな寝たきりにならずポックリ逝く
K 税金はそこそこあるが、無駄遣いされていない
L 善良な人は多いが、悪人もそれなりにいる
M 自然環境が保護されている。クリーンエネルギーのシステムが確立
N 国際関係は列強の均衡がとれている(超大国や最貧国が存在しない)
O 世界中に開拓・開発の余地がある
P でも発展度合いは大差ない
Q よって人口の急増とも無縁(世界人口20億人くらいで微増)
R どこにいってもその土地特有の旨いもの・旨い酒がある
S 女性はみんな美人
要するに、「自己責任」「みんな違ってみんないい(あいだみつお)」「危険が無いわけではないので、緊張感がある」「美人ばっかし」という世界が、筆者の理想である。Sは絶対に譲れない(半分冗談、半分本気)。
(2)どうやって実現すんの
なにせ「存在しない理想郷=ユートピア」である。名前からして存在しないと言い切っているからタダ者ではない。お見合いパーティーで「アタシ、結婚する気ないのぉー」と言ってのける才色兼備のお嬢様みたいなもんだ。そのココロは、「ハナっから、ゴールに行く気ないじゃん!!」。しかし、政策や国家を語るにあたって、理想すなわち最終目標が無い状態で、何を語れるだろう。
「財政再建」「小さい政府」「道州制」「戦争放棄」「核廃絶」「小選挙区制」「消費税率アップ」「日米関係」「アジア外交」あるいは「民主主義」「社会主義」「共産主義」・・・政治のキーワードは多いが、どれも所詮「方法論」に過ぎないのではないか?結局どこを目指しているのだ、政治家達は?
彼らの主たる仕事はその理想を語ること、そしてそこへ行き着く道をデザインすることではないのだろうか。「地元に道路を造りましょう」そんなものは数ある政治家の仕事のうちのほんの小さな一部分に過ぎない。
また、官僚の仕事は、政治家達がグランドデザインをひいた後に、肉付けをしていく(具体的な作業に落とし込んでいく)ことだろう。もちろん、官僚がグランドデザインを提案することがあってもいいはずだ。
いずれにせよ、政治家は「国、ひいては世界の理想像」を考えるべし!おっと、「G色んな価値観が共存している」を否定するようなことを言ってしまった。これは政治家に対しての価値観の強制か?いや違う。強制ではなく、彼らの義務であるはずだ。
言葉遊びはこれくらいにして、この理想をどうやって実現するか?
それが分かれば今頃世界はユートピアだ。方法論を編み出せたらノーベル平和賞100個貰ってもおつりがくる。人類史上最高の偉人だろう。宇宙人にだって自慢できちゃう。
あ、そもそも「世界中の人間の総意としての理想」ってのを築き上げるのに1000年くらいかかるか。せめて「日本国民の総意としての理想」ってのは10年くらいで作れませんかね、安倍さん?
(3)じゃあ、「美しい国」ってなぁに?
安倍晋三「美しい国へ」文春新書、2006年7月、730円(税抜き)。帯には「自信と誇りの持てる日本へ」とある。・・・それがあればいいの?それが最終目標なの?
教育の再生、少子化対策など、書かれている内容に特に反対する気は無い。「具体性が全く無い」という批判はあるが、何せ新首相本人があとがきで「本書は、いわゆる政策提言のための本ではない。(中略)政治は未来のためにある−わたしの政治家としての根っこにある想いを知っていただければ望外の喜びである」・・・と述べているくらいだ。首相官邸の新しい主人が理想とするのは「美しい国」・・・何だかよく分かんねーや。(2006/9/26)

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