世界に進出した『ジュウレンジャー』」著作権攻防(産経新聞)
“純血”を取るか、“混血”となって世界を目指すか−。輸出国の文化に合った大規模な改変を受け入れた結果、世界に羽ばたいた日本の子供向け特撮ドラマがある。5人の若い男女が、ポーズとともにボディースーツ姿に変身して戦い、最後は巨大ロボットを操縦して敵の怪獣をやっつける−。日本で30年以上に渡って放映され続けている子供向け特撮ドラマ「スーパー戦隊シリーズ」だ。
このドラマが最初にブームを巻き起こしたのは1993年。日本で見たシリーズにほれ込んだ米国のプロデューサーが、米放送局に売り込み、子供向け番組としては記録的な高視聴率を稼ぎ出した。
ただし、当時の邦題の「ジュウレンジャー」は「パワーレンジャー」に改称。人物が登場する場面はすべて米国人俳優に代えて撮り直された。作品のコンセプトと特撮シーンは日本の映像を用い、人物設定などドラマの細部を米国流にアレンジしたリメーク版だ。
著作権法では、作者の意に反した作品内容の変更や短縮などを認めないことができる「同一性保持権」が認められているが、戦隊シリーズの米国進出が成功した秘訣(ひけつ)は、思い切ったリメークの許諾にあった。
ジュウレンジャーのプロデューサーだった鈴木武幸・東映取締役は「日本人ばかり登場する番組は、米国では受け入れられないので、当初からリメークに合意した。戦隊シリーズの版権はすべて東映のものなので、権利処理はやりやすかった」と振り返る。
もともと日本の特撮技術は評価が高いが、米国で評判を得るため、特撮以外の部分にもさまざまな工夫が施された。例えば、登場人物にはヒスパニック系、アフリカ系など多様な人種を織り交ぜ、戦闘シーンも米国の放送基準に合わせて顔への攻撃を避けている。
パワーレンジャー・シリーズは現在まで人気を集め続け、日本の戦隊シリーズから1年遅れのリメーク版が、米製作会社を通じて世界各地で放映されている。
苦労して生み出した作品に対する愛着ゆえに、作品に手を加えることを認めない作家や作曲家は少なくない。しかし、世界市場を相手にするためには、柔軟な対応も求められる。優れた著作物ほどリメークされ、さらにファンを広げる。それを名誉と考えるべきかもしれない。

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