トルコに初の親イスラム大統領誕生(朝日新聞)
トルコ国会は28日、国会議員による大統領選の3回目の投票で、親イスラム与党・公正発展党(AKP)のギュル外相を選出した。
4月の大統領選が無効とされて以来、与党が野党や軍など世俗主義勢力と対立してきた政治的混乱は、AKPが7月の総選挙での圧勝を背景に、政府と大統領職を占めることで終止符が打たれる。ただ、軍はなおAKPの「独走」を警戒。今後の安定は、イスラム色を薄めた同党が本格的な国民政党に脱皮できるかどうかがカギを握る。
ギュル氏は339票を獲得。当選ラインはこの日の投票から定数550の過半数に引き下げられており、当選を決めた。ギュル氏は直後に宣誓式に臨み、初代のケマル・アタチュルク氏から11代目の大統領に就任。就任演説で「世俗主義の価値は自由を守り、社会の衝突を未然に防ぐことにある」と語った。
世俗主義が国是の近代トルコで、イスラム政党に所属した経歴の大統領が誕生したのは初めて。エルドアン首相は保留中の新内閣の閣僚リストを29日にも提示し、承認を得る考えを示した。ギュル氏以外に、民族主義者行動党(MHP)候補が70票、民主左派党(DSP)の候補が13票を獲得。最大野党・共和人民党(CHP)は28日も投票をボイコットした。
同じギュル氏が候補だった4月の大統領選では全野党が投票をボイコット。出席が3分の2未満だったのを理由に憲法裁判所が無効とした。しかし、AKPは総選挙で46%を得票。今回はCHP以外の3野党が投票に参加した。圧倒的な民意を前に、CHPも事実上動きがとれなかった。
AKPが欧州連合(EU)加盟交渉開始を果たした実績や経済改革による発展継続を訴えたのに対し、CHPはAKPがイスラム主義政党の流れをくむことを根拠に「イスラム化の恐怖」を訴えることに終始。民意をくみ取れなかった指導部に支持者の不満は強い。
しかし、AKPは国民の「イスラム主義」への懸念ふっしょくに成功する一方、世俗主義勢力の強い抵抗感まではぬぐい去れなかった。総選挙後沈黙を保ってきた軍は27日、勝利記念日の参謀総長所感の中で世俗主義堅持のため妥協を拒否。ギュル氏の宣誓式ではCHP議員が欠席、軍の首脳らも姿を見せなかった。
AKPがかつて前セゼル大統領に拒否された姦通(かんつう)罪の刑罰化などイスラムに絡む問題に踏み込めば、再び緊張が高まるのは必至だ。

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