処分限定「見せしめだ」 大分汚職、07年度以前未解明(朝日新聞)
「不正は以前からあるはずなのに……」。今春採用された教員の一人は、勤務する大分県内の小学校で、県教委が同期21人の採用取り消しを発表したことを知り、「見せしめだ」と憤った。
今春採用の3人が勤める佐伯市の小学校に孫が通う女性(61)は「(来週から)2学期も始まるのに、該当者がいたら子どもにどう説明するのかしら」と戸惑う。県教委の29日の記者会見では、取り消しが08年度分に限られたことに質問が相次いだ。07年度以前の「不正合格者」は見逃されることを指摘されると、小矢文則教育長は「根拠づけるデータがない。どうしようもない」と語気を強めた。
県教委の教育行政改革プロジェクトチーム(PT)の作業は難航した。事件で押収されたパソコンの仮還付を7月末に受け、削除や上書きされた得点データの復元を始めたが、作成日時がわからないファイルもあった。
「答案があれば一番いいのだが……」。今月24日、PTのメンバーは漏らした。元義務教育課参事、江藤勝由被告(52)の証言も得て、復元データが実際の得点かどうか、裏付けを急いでいる最中だった。
教育委員の一人は慎重論を唱えてきた。「実際の得点がわからなければ、絶対に不正があったという保証がない。人の人生を軽々しく狂わせるわけにはいかない」
県教委は会見で、江藤元参事らの証言と、復元データに矛盾がなかったと説明。県警の復元データとの照合で一致したことも根拠とし、「厳密な証拠として耐えうる相当程度の確実性が認められる」との弁護士の見解も紹介した。PTは過去10年間の人事担当者ら101人から事情を聴いてきた。「不正はありません」
元高校教育課職員は約2時間の聴取で繰り返した。それでも、「義務教育課でこんなに不正があったのに、高校教育課でないはずはない」「世間は納得しない」と畳みかけられた。最後は「ウミを出し切るために協力してください」と懇願調だった。

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