東証、自社株上場は来年度以降に延期へ 相場低迷で(朝日新聞)
東京証券取引所は24日、09年中を目指していた自らの上場計画を10年度以降に先送りすると発表した。株式相場の低迷で細った売買がすぐに戻る気配は乏しく、提携戦略で取得した海外の取引所の株式で評価損を出して赤字に転落。「東京市場」を象徴する存在でもある東証のつまずきは、金融危機に苦しむ株式市場の現状を映し出した。
上場の狙いは、株価をはっきりさせて海外取引所との提携を進めやすくし、システム投資などの資金調達をスムーズに進められるようにすること。だが、提携戦略そのものも足を引っ張った。
09年3月期決算では、保有するシンガポール取引所の株式の評価損207億円を計上し、約70億円の税引き前赤字に転落する。関係強化を目指して07年6月に発行済み株式の4.99%を取得したが、金融危機の影響で株価は4割超も下落し、収益の柱である株式売買の手数料収入の目減りに追い打ちをかけた。
01年に株式会社化して以来、初めての純損失となる可能性が高く、経営責任をとって会長、社長ら4役員が1カ月間、30〜10%の役員報酬カットを決めた。
投資家に示す先々の経営目標も揺らぐ。3年間の経営計画の最終年度にあたる11年3月期に、1日当たり3兆8千億円を見込んでいた株式の売買代金は、半分以下の1兆7千億円に下方修正。「これまでのような(活発な)取引が期待できないと考えられる」(斉藤惇・東証社長)からだ。
当初の上場目標は05年度。これまでの先送りにつながったシステムトラブルなど一時的な要因ではなく、今回は本業が振るわないためだ。
斉藤社長は記者会見で「10年度以降のできるだけ早い時期」の上場を強調したが、先行きは不透明だ。東証は、先物取引などのデリバティブ(金融派生商品)で収益基盤を広げる計画だが、主力商品の取引高は前年割れの状態。プロの投資家を呼び込む新市場づくりも業界の評判はいまひとつ。「上場自体が目標となりすぎており、意味と目的を改めて問い直す必要がある」との声が東証内部にもくすぶっている。

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