景気二番底の可能性「33%」 フェルドスタイン教授(朝日新聞)
当地で開かれた経済シンポジウムに参加した米著名エコノミスト、マーティン・フェルドスタイン・米ハーバード大教授が、朝日新聞のインタビューに応じた。米国の景気が再び後退し、「二番底」に陥る確率は「三つに一つ」(33%)と明言。デフレに陥っている日本経済に対しては、段階的な消費増税と所得減税を組みあわせ、物価上昇と消費拡大を促すアイデアも語った。
――米景気の減速が鮮明になっています。
「いまの米経済は非常に脆弱(ぜいじゃく)だ。成長率は四半期を重ねるごとに下がっている。4〜6月期の最新の数字(1.6%増)で、本当に失速してしまった。年率で1%台であり、四半期に分けて考えれば、0.25%程度の変化でしかない。マイナス成長の領域に簡単に入ってしまう可能性がある数字だ。次に何が起こるのかは見通しづらい」
――特に懸念しているのはどの分野ですか。
「(今年4月末に)税制上の優遇措置が終わってしまったことで、住宅分野が特に打撃を受けている。企業の設備投資は今年後半に弱含む可能性が高い。我々は、とてもとても弱いペースで、はっているようなものだ」
――米景気が二番底をつける可能性は。
「そのリスクは依然としてかなりあると思う。数四半期にわたりマイナス成長に陥る可能性は、三つに一つはある。月ごとの国内総生産(GDP)では、すでに5月と6月に前月比でマイナスに陥っていたという推計もある。来年初めに下降局面を迎えることは容易に起こりうる」
――米経済はデフレに陥るのでしょうか。
「私はかなり最近になるまで、米経済はデフレに陥ることは決してないと、楽観的だった。今年デフレになった月がいくつかあったが、エネルギー価格の下落を反映したものにすぎなかった。だが、米経済は非常に高水準の失業に直面している。それが物価上昇率のさらなる下落につながる可能性はある。ただ、大幅なデフレに見舞われることはないと思う。物価がプラス1%か、マイナス1%かは、たいした問題ではない」
――米経済が、日本のような長期の低迷に陥るという議論があります。
「私はよく日本に行くが、日本の失われた10年についてはよく分からない。日本経済は、米経済とは、いろいろな面で大きく違う。日本の不動産の状況や、銀行システムの立て直しの緩慢さなどだ。日本の経験が、米国に持ち込まれるとは思わない。ただ、日本についてはちょっと意見があります」
――ぜひ、聞かせてください。
「日本銀行は、物価水準を上昇させることをできないでいるようだ。物価が上がると思えば、人々はいまモノを買おうとする。一方で、日本には大規模な財政赤字がある。私は、日本は消費税に手をつけるべきだと思う。消費増税は経済に打撃を与える可能性があるが、例えば、1%ずつ、3カ月や6カ月ごとに上げ、それを数年続ける。その一方で、その分を所得減税すればいい。この増減税の組み合わせなら、財政赤字を増やすことにはならないし、家計には『消費増税で価格が上昇する前に買うべきだ』というメッセージを送ることができる」

0