2010/10/30  19:39

職業訓練所全廃?  ロケットサラダの日記
読売新聞2010年10月16日(土)夕刊より転載

仕事ない・・・・訓練の場もない

80施設全廃 求職者に打撃

政府は全国約80か所ある国の地域職業訓練センターを、来年3月までに全廃する方針を示している。完全失業率が5%を超える雇用情勢が続く今、国による公共職業訓練の見直しが妥当かどうか。揺れる現場を訪ねた。(大津和夫)

「仕事も少ないのに、訓練の場までなくなるんですか」と、北海道の苫小牧地域職業訓練センターに通う苫小牧市の男性(31)。6月に派遣会社を解雇されたため、7月からパソコンの資格取得講座を受講している。「センターがなくなれば、高いお金を出して民間の講座を受けるしかない」とうなだれた。
地域職業訓練センターは、厚生労働省の決定に基づいて独立行政法人「雇用・能力開発機構」が各地に設置した施設。地域の企業でつくる団体などが運営しており、企業の社員や離職者向けに、情報技術や土木関連の資格取得講座などを提供している。

苫小牧のセンターは、昨年度の延べ利用者が約2万5000人で、利用率は約7割だった。同センター運営協会の太田公夫・事務理事は「民間の啓発講座も多い都市部と異なり、このセンターは地域の人材育成の拠点。解体されれば求職者や在職者への影響は大きい」と話し、市などに建物を引き継ぐよう求めている。

これに対し、苫小牧市は「道など関係自治体と協議中」と慎重な姿勢だ。暖房設備の取り換えなど今後10年で約5000万円の修繕費が見込まれ、「市の財政難を助長しかねない」との懸念があるためだ。市の幹部の一人は「そもそも安全網の拡充は国の仕事。一つの自治体での対応は難しい」と国の対応を疑問視する。

道内には、同じような事情を抱えるセンターが合わせて4か所。高橋はるみ知事は7月の記者会見で、国がハローワークの地方移管には慎重な点を引き合いに出し、「ハローワーク同様に重要な職業訓練は『地方でどうぞ』というのでは(国の姿勢に)整合性がない気がする」と批判した。

「訓練を地方に丸投げするのは無責任」、「なぜニーズの高い施設も廃止するのか」など、他の自治体からも疑問が噴出している。

「無駄」批判

問題の発端は、職業体験施設「私の仕事館」(京都府)などで税金の無駄遣いが指摘されたことを受け、一昨年12月、雇用・能力開発機構の廃止を決めたこと。ただ、当時の自公政権は各地のセンターに関し、一定の利用率さえ上回れば存続させる方針だった。
ところが、民主党政権は昨年12月、「さらなる予算の縮小が厳しく求められている」などの理由から一律廃止に転じた。自治体に「事業を引き受けない限り、施設を解体する」と8月に譲渡条件を提示。11月の回答を求めている。

リクルートワークス研究所(東京)の大久保幸夫所長は「国は機構の組織の無駄を省くことと、安全網の話を混同している。職業訓練は国が保障すべき分野。財政面でもノウハウの面でも、地方に任せるのは難しい。地域間で格差が生じる恐れもある」と指摘する。



企業に依存

センターが全廃されても、国が公共職業訓練から手を引くわけではない。都道府県や専門学校などの民間団体を通じた訓練があるためだ。しかし、一連の動きは、「量」でも「質」でも貧弱だった公共職業訓練の現実を浮き彫りにしている。

例えば他国に比べ、職業訓練の「量」が見劣りしている。経済協力開発機構(OECD)が出した2007年のデータによると、職業訓練や職業紹介など積極的労働市場政策への支出が国内総生産(GDP)に占める割合は日本で0.16%。イギリスの0.32%、ドイツの0.77%、フランスの0.92%と比べて低い。日本ではこれまで、職業訓練を企業の社内教育に依存してきた面があるからだ。

しかし、1990年代以降、国際競争の激化や企業業績の悪化などで、企業は教育訓練投資額を削減している。厚労省の調べでは、給与など労働費用に占める
教育訓練費の割合は、02年が0.28%で、88年より0.10ポイント落ち込んでいた。雇用者の3人に1人以上を占める非正社員は、訓練を受ける機会が乏しい点で、とりわけ深刻だ。厚労省の「09年度能力開発基本調査」によると、業務を一時離れて行う研修などの教育訓練では、7割近くの事業所が正社員に実施しているのに対し、非正社員には約3割にとどまっていた。

合わぬニーズ

職業訓練の「質」はどうか。「訓練内容が雇用のニーズとマッチしていない」との批判が絶えない。

東京都内在住で休職中の男性(42)は、昨年11月中旬から今年2月中旬まで3か月間、情報技術の職業訓練を受けた。だが、今も失業中。貯金も底をつき、生活保護の申請を考え始めた。男性は「講師の質や内容のレベルも今一歩で、受講しても強みにならない。事務系の職は実務経験が乏しければ企業は雇ってくれない」と嘆く。

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投資効果

職業訓練は、個人の職業生活だけでなく、国の財政にも“投資効果”がある。

厚労省の有識者でつくる「ナショナルミニマム研究会」は6月、高校を卒業した若者が職業訓練を受けて就労すれば、訓練を受けずに生活保護を受け続けた場合より、国の財政に最大1億円以上のプラス効果が期待できる、とのデータを公表している。

慶応大の清家篤教授(労働経済学)は「今後の国の最大の課題は労働者の能力開発。国、自治体、企業の3者が連携し、利用者本位の視点で質や内容を改善すべきだ。特に、非正社員など困難な問題を抱える若者の訓練費用は社会全体で負担する必要がある」と話している。
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