京都サンガF.C.のホームとなる「サンガスタジアム by KYOCERA」が完成し、素晴らしい球技専用競技場であるとの高い評価を受けている。その一方で、寄付金の不足分を京都府がまかなうとの報道に多くの批判が寄せられた。Mazda Zoom-Zoom スタジアム広島など数々のスポーツ施設を手掛けてきた専門家・上林功の視点で、これほど多くの批判を受けることになった背景と、スタジアムと「寄付」について、そしてスポーツはスタジアム・アリーナの建設を通じて一体何を提供できるのかを考える。
(文=上林功、写真=KYODO NEWS)
2020年1月、京都サンガF.C.のホームとなる「サンガスタジアム by KYOCERA」が完成(写真=KYODO NEWS)
なぜここまでネガティブな批判を浴びたのか
京都の亀岡駅前に新スタジアム「サンガスタジアム by KYOCERA」が完成し、2月9日にこけら落としイベントが行われました。京都サンガF.C.のホームとなるこのスタジアムは、紫色で統一された観客席やピッチに近い臨場感のある観客席スタンド、プロサッカーのみならず日本で初めてスポーツクライミング(リード・ボルダリング・スピード)の国際基準を満たした屋内クライミングジムなどの併設施設も含めて最新の駅チカスタジアムとして話題になっています。一方3月に入り、スタジアム建設費に充てる予定であった寄付金が想定の20億円に届かず、不足分の17億4700万円を府債でまかなうことが報道されました。
このように人々が共に参加し、共に賑わいを生むような仕組みは「共創」と呼ばれています。この共創の価値のコアとなる概念として「共同生産(Co-production)」と「使用価値(Value in use)」の2つがあると言われます。みんなでつくること、それが使い続けられることそのものに人は価値を見出しているといえます。