「トランプ一族、470億円「巨額脱税」の全貌(東洋経済より)」
企業会計
トランプ一族、470億円「巨額脱税」の全貌
ニューヨーク・タイムズ紙のスクープ
トランプ大統領一族の脱税疑惑をスクープしたニューヨーク・タイムズの記事の日本語版。
最初に疑惑の概要とトランプ氏側の反論にふれた後、この報道が膨大な量の資料に基づいていることを強調(自画自賛?)しています。
「この報道はフレッド・トランプ氏の会社の元従業員と元相談役への取材と、彼の「帝国」の内部構造と巨大な収益性を説明する
10万ページ以上にのぼる資料に基づいている。この資料には
公の情報源から集められた、抵当権と譲渡証書、遺言検認記録、資産公開報告書、規制記録、そして民事裁判所の記録が含まれる。
この調査はまた、何万ページもの
非公開記録を利用しており、中には銀行取引明細書、会計監査報告書、会計台帳、現金支出報告書、請求書や支払い済み小切手が含まれる。
特に注目に値するのは、この資料にはフレッド・トランプ氏自身、彼が経営する複数の会社および、さまざまなトランプ提携会社と信託会社から提出された200枚以上の
納税申告書が含まれている。
この記録文書には大統領個人の納税申告書は含まれていないので、彼の最近の国内外の商取引についてほとんど何も明らかにならないが、数十におよぶ企業、提携会社、そして信託の納税申告書によって、トランプ大統領が何十年にもわたって一族のさまざまな企業から得てきた収入の会計報告が初めて明らかになったのだ。」
トランプ大統領は、父親(フレッド・トランプ氏)の力をほとんど借りずに成功したと宣伝していますが、実際は...
「トランプ氏は
3歳になるまでに、現在の金額にして年間20万ドルの収入を父親が築いた帝国から得ていた。そして8歳のときにはすでに大富豪となっていた。17歳になる頃には、総戸数52戸のアパートの共同所有権を父親から譲り受けていた。大学を卒業した直後には、トランプ氏は年間100万ドル相当を父親から受け取っている。年を追うごとに金額は増え、
40代から50代にかけては年間500万ドル以上に膨れ上がっていた。」
父親からトランプ氏らへの財産の移転方法は...
「1988〜1993年におよぶ6年間で、フレッド・トランプ氏は1億970万ドルの総所得を申告しているが、これは現在の金額にして2億1070万ドルに相当する。毎月数千万ドル相当の財務省証券や預金証書が同氏の個人銀行口座を経由していたが、これは珍しいことではなかった。
フレッド・トランプ氏は、容赦なく独創的な手段を編み出し、自身の富を自分の子どもたちへと流す経路を見つけた。同氏は
ドナルド・トランプ氏を有給で自社の従業員にしただけでなく、
不動産管理者、家主、銀行家、コンサルタントとしても雇用している。
融資もたびたび行っており、その
ほとんどが返済されていない。
また同氏は、
ドナルド・トランプ氏の車、従業員の給料、株式の購入、マンハッタンに構えた最初のオフィス、それらのオフィスの改修などにかかった費用も負担している。さらには
3件の信託基金と複数の合名会社で株式も譲渡している。クリスマスには1万ドルの小切手を渡したこともある。そして所有していた建物のランドリーサービスの収益も、息子に譲渡している。
フレッド・トランプ氏による譲渡はほぼ、税金の専門家がタイムズ紙に対して不適切、場合によっては違法な可能性もあると説明されている手法を用いて、
贈与税や相続税を回避できるよう仕組まれていた。」
税金を回避した方法は...
「合法的な税金回避と非合法な脱税はその境目があいまいな場合が多く、独創性に富んだ税金専門の弁護士によってつねに拡大解釈されている。裁判所やIRS自体の賛同を得ている、巧妙な税金回避法はいくらでもある。
もっとも裕福なアメリカ人で満額に近い額を負担している者はまったく、もしくはほとんどいない。
しかし、税務専門家らは、タイムズ紙の調査結果では、トランプ氏が
合法的な抜け穴を悪用する以上のことをしているようだと説明した。彼らは、これらの資料に記述されている行為が、特に
フレッド・トランプ氏の不動産の価値について、詐欺と難読化のパターンを示していると語った。
「このすべてを通して、
注目すべきは評価査定だ。彼らは
極端にいいかげんに査定を行っている」と、フロリダ大学の法学教授で贈与や不動産税法の一流の専門家である、リー・フォード・トリットは話す。 「彼らの目的によって、極端な変動が見られる」。
税金を回避するための価格操作は、ドナルド・トランプ氏の人生における財政的出来事の中で、最も重要な1つである。これまで明らかにされていなかった話では、トランプ氏と彼の兄弟は、フレッド・トランプ氏の死の1年半前、1997年11月22日に父の帝国のほとんどを所有していた。
この複雑な
取引にとって重要なのは、不動産につけられた価値だった。その価値が低いほど贈与税は低くなる。トランプ兄弟は、その資産を
大幅に過小評価した納税申告書を提出することによって、わずか4140万ドルの価値と主張し、数億ドルの贈与税を回避した。」
ペーパーカンパニーを使った所得の移転もあったそうです。
「最もあからさまな詐欺は、1992年にトランプ家によって創設された会社、オール・カウンティ・ビルディング・サプライ&メンテナンス(以下オール・カウンティ)だ。オール・カウンティの
表面上の目的は、ボイラーからクリーニング用品まですべてを購入する、フレッド・トランプ氏が所有する不動産向けの購入代理店であった。
だが、実際にはこうした業務を行っていなかったことは、記録とインタビューが示している。 代わりに、オール・カウンティは従業員が
すでに買った物件価格を単純に上げることで、フレッド・トランプの帝国から数百万ドルを受け取っていた。
こうした金は、
事実上課税されていない贈与として、オール・カウンティの
オーナーたちであるドナルド・トランプ、彼の兄弟、そしていとこに流れた。それからフレッド・トランプは、数千人のテナントの賃料増を正当化するために、水増しされたオール・カウンティの領収書を使用した。」
親族を高い給料・報酬で雇う、親族の会社にマージンが落ちるように取引を仕組む、親族への贈与の際の財産評価額ができるだけ低くなるようなスキームを考えるなど、日本の大金持ちも同じようなことをやっていそうです。もちろん、日米問わず、節税という限度を超えていれば、問題でしょう。また、トランプ氏については、政治家としての道義的責任もあります。
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原書。


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