「英FRCなどがガイダンスを公表〜新型コロナウイルス感染拡大が期末残高に影響する可能性も(経営財務より)」
企業会計
英FRCなどがガイダンスを公表〜新型コロナウイルス感染拡大が期末残高に影響する可能性も
英国の財務報告評議会(FRC)や英国勅許会計士協会(ICAEW)が公表した、コロナウイルスによるリスクに関する開示についてガイダンスを紹介した記事。
このうち、FRCのガイダンスは...
「FRCは2月18日に,スポークスマンによるガイダンスを公表した。中国での新型コロナウイルスの出現とその拡大を受け,「これらに関連して,今期末決算においていかなる開示を含めるべきか,慎重に検討することを企業に奨励する」としている。その上で,以下の点を述べている。
・企業は,
主要なリスクと不確実性に関する報告において,自らの事業に対する新型コロナウイルスの考えられる
影響に言及(refer)するかどうかを検討するべきである。
・
緩和策を講じることができるならば,リスクそれ自体の記載と併せて,これらも報告されるべきである。
・
追加の減損テストを実施したり,リースが不利なものになっていないかを評価したりする必要があることから,資産と負債の帳簿価額に影響がある可能性がある。
・2019年12月31日時点ではこのようなケース(新型コロナウイルスによる感染)はほとんど確認されず,ウイルスが識別されただけであったため,
12月期決算企業にとっては,これらの出来事は開示後発事象となる可能性が高い。ただし,それより決算日が遅い企業においては,期末残高に影響する可能性がある。」
ICAEWのガイダンスは、「グループ監査人のための考慮事項」という監査人向けのものです。「報告スケジュールを遅らせることができないか,議論する」ことも考慮事項に入っているそうです。
新型コロナウイルスの発生自体は、昨年末以前なのでしょうが、世界的な感染拡大は今年に入ってからです。また、企業にとっては、ウイルス感染の直接的影響(日本ではまだ大きくない?)だけでなく、感染防止のための政府の施策や企業の自主的対応による影響も大きくなるでしょう。さらには、業種全体や経済全体への影響もあります。後発事象は、決算に反映すべきもの(修正後発事象)と開示すればよいもの(開示後発事象)がありますが、新型コロナウイルスについては、そもそも発生が決算日の前なのか後なのか、そして、決算日後だとして、「修正」後発事象なのか「開示」後発事象なのかを区別するのは、結構難しいようにも思われます。
Applying IFRS コロナウイルス感染拡大におけるIFRS会計上の留意点(新日本監査法人)(日本語版と英語版あり)
EYによるこの解説では、以下の項目を取り上げています。
• 後発事象
• 継続企業
• 公正価値測定
• 予想信用損失の評価
• 資産の減損
• 財務諸表の開示に関するその他の規定
• その他の会計上の見積り
このうち、後発事象に関するまとめの部分。
「多くの企業にとって、
事業活動、資産及び負債への影響の大部分が、感染症拡大が直接的な原因ではなく、
感染症を封じ込めるために講じられた対策に起因する可能性がある。
そうした企業は、当該事象が
報告期間の末日時点で存在していた状況の証拠を提供するものではないと結論付け、それは修正を要しない後発事象になると判断する可能性がある。しかし、
感染症拡大及びその後の対策により生じる影響に重要性がある場合、主要な財務諸表利用者に有用な財務情報を提供するために、企業は当該事象及び(可能な場合には)財務上の影響額の見積り又はその後の営業活動の状況に関する定性的な情報を開示すべきである。」
原文
For many entities, most of the impact on business operations, assets and liabilities may not have been a direct consequence of the outbreak, but a result of the measures taken to contain it. Such entities may conclude the event did not provide evidence of conditions that existed at the end of the reporting period and assess it is non-adjusting. However, if the impact from the outbreak and the subsequent measures is material, the entities should disclose such events and an estimate of its financial impact (if practicable) or a qualitative description of its subsequent operating situations, in order to provide useful financial information for its primary users.
公正価値測定については...
「公正価値測定は、将来ではなく
測定日時点の状況を反映する資産又は負債の公正価値を伝えることを目的としている。
したがって、企業は報告日時点の公正価値を算定するために、
市場参加者が、感染症の拡大に関し同日時点でどのような情報を知っていたか、もしくは知り得たかを検討しなければならない。」
原文
The objective of FVM is to convey the current value of the asset or liability that reflects conditions as of the measurement date and not a future date. Accordingly, entities should consider what information about the outbreak was known and knowable to the market participants at the reporting date in order to determine the fair value at that date.
現時点では、ウイルス感染が大きく拡がっていることをだれもが知っているわけですが、例えば、2019年12月末時点では、市場参加者が、ウイルス感染がこれほど急拡大するとは予想していなかったとすると、2019年12月期では、急拡大を織り込まないで公正価値を見積もるということでしょうか。
米国の動向は...
新型コロナウイルスの影響に関する規制当局の声明文(2月20日号)(EY)
先月中旬の時点では、「
中国などの新興市場で事業を展開する上場企業の監査及び新型コロナウイルスが財務開示や監査品質に及ぼす影響」が心配されていましたが、現時点では、中国だけの問題ではなくなっています。
「新型コロナウイルスが企業に及ぼす影響を評価・予測することは困難ですが、同声明文は発行会社に対し監査委員会及び外部監査人と協力して財務報告、監査、レビュープロセスを着実に実施するよう努めることを奨励しています。さらに、(1)企業はASC855「後発事象」に従い、
財務諸表注記において後発事象を開示する可能性を考慮する必要があること、(2)自然災害等、発行会社には制御不能な状況下で、適切なレビューを受け注意が払われた状態での書類提出が適時に完了できない場合、SECは規定の適用除外により
提出期限の延長を認めることも強調しています。現時点でSECは、前述の救済措置を多面的に講じる新型コロナウイルス対策を公にはしていませんが、同声明文では発行会社とそのアドバイザーに対し、救済措置や指針が必要な場合はSECスタッフに問い合わせるよう推奨しています。発行会社 は、状況に応じて必要な救済措置が受けられます。」
Statement on Continued Dialogue with Audit Firm Representatives on Audit Quality in China and Other Emerging Markets; Coronavirus — Reporting Considerations and Potential Relief(SEC)
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