「「違法性の認識」に揺さぶり ゴーン事件、弁護側が尋問(朝日より)」
不正経理
「違法性の認識」に揺さぶり ゴーン事件、弁護側が尋問
日産ゴーン事件のケリー氏の刑事裁判の記事。
検察側の証人である日産の元秘書室長大沼氏に対する弁護側の尋問が4回行われて、「弁護側は「違法性の認識」を認めた元室長の証言の信用性に揺さぶりをかけている」そうです。
「大沼氏は司法取引した検察側からの11回の尋問で、
金融庁が2010年2月に役員報酬を個別開示する制度案を公表したため、高額報酬の一部を開示せずに支払う検討が始まったと証言。当初から「
金商法の趣旨に反すると思っていた」と明言した。
これに対し弁護側は「合法的な方法」が前提だったという立場で追及した。
大沼氏がケリー元役員の指示で検討内容をまとめたという文書の日付については「金融庁が案を公表した10日後だ」と指摘。「色々な合法的な手段を考えることなく、
東証一部上場企業がわずか10日で違法行為を検討したのか」と尋ねた。
大沼氏は「
ケリーさんに、法に違反しているとは言わなかった」と述べる一方、「開示を逃れる方法なので、ケリーさんも(違法と)承知していると
思っていた」と答えた。
非連結子会社(オランダ)を迂回(うかい)して支払う案をケリー元役員と検討した、との大沼氏の証言には、大沼氏が同僚に送ったメールを示して質問。
「法的に問題ないことが大前提だ」と言われたと記されており、「ゴーンさんに言われて合法的な方法を検討したのでは」とただした。大沼氏は元会長に言われたことは認めたが、元会長の発言の趣旨を「オランダの法律で問題がないか」などと説明し、
日本で開示を免れる違法性の認識は変わらないと主張した。」
2010年当時は、たぶん、日産だけでなく、多くの上場会社で、どうにか役員報酬の個別開示を免れる方法はないか検討していたことでしょう。開示することをいさぎよく決めた会社が開示姿勢が積極的で一番偉いとは思いますが、回避策を検討すること自体は、法律違反でも何でもありません。記事を読む限りでは、ゴーン氏もケリー氏も法律違反してでも開示するなとまではいっていないようです。元秘書室長自身も、当時は、違法行為をしているとは思っていなかったのでないでしょうか。検察から、無理やり、自分もゴーン氏らも違法性認識があったといわされているようにみえます。
当サイトは、そもそも、虚偽記載はなかったのではないかという見方なので、違法性の認識の有無というのは関係ないように思われますが、弁護側としては、仮に虚偽記載があったとしても、違法性の認識はなかったから、無罪だという主張になるのでしょう。虚偽記載の有無についても、あとで審議がなされることが期待されます。
元秘書室長は、検察側と証言について打ち合わせをやっているようです。検察のシナリオ通りに証言するよういわれているのでしょう。
「また弁護側は、大沼氏が検察側尋問で答えた証言と矛盾するような内容の資料も新たに示した。これに対し、大沼氏は検察側尋問の終了後に
検察官と面会して事実関係を確認していたことを明かし、「検察官に確認してくださいと言われて自分の間違いが分かった」と発言を訂正。「
検察官に示唆してもらって間違いだと気づいたのか」と追及され、「その通りです」と認めた。」
ゴーン氏逮捕から2年ということで、経緯をまとめた記事。有罪前提の記事です。
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ゴーン被告逮捕2年、罪問う見通したたず 本人はネットで反論 日産も困惑(産経)
「公判では、東京地検特捜部との司法取引に応じた大沼敏明元秘書室長の証人尋問が続く。大沼氏はゴーン被告への未払い報酬があったとした上で、「開示を避けてどのように支払うかを検討してきた」などと具体的に証言している。」
ゴーン氏の近況。
「ゴーン被告は11月3日、公式ツイッターを更新し、自らの主張などを発信するウェブサイトを立ち上げたと明らかにした。英語とフランス語で記され、日本の刑事司法制度を「人質司法」だとして「非人道的で外国人差別を伴う」と持論を展開。フランスでは「真実のとき」とのタイトルで共著本を出版した。」
ゴーン氏に対する民事訴訟についても、日産の立場からふれています。
こちらの記事(ゴーン氏に批判的な書き方です)によると、ゴーン氏は、ネットだけでなく、フランスのテレビにも出演しているようです。
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「罪認めるのはハラキリ」仏テレビ連続インタビュー「ゴーン」独善独白(フォーサイト)
「 11月のはじめにフランスのテレビ局で、1週間の間に立て続けに3回、レバノンに逃亡中のカルロス・ゴーン日産自動車元会長の単独インタビューが放送された。」
「最初に放送されたインタビューは、11月1日の民放局『TF1』の報道番組『7 à 8』。日曜日の午後7時から、1時間で3〜4本のルポを流す番組で、ゴーンのものは「生涯逃亡者」という題名で12分間のインタビューであった。」
「国営放送『France 2』は、『TF1』放送の1週間後(11月8日)、昼のニュース後の45分のドキュメンタリー枠で「
カルロス・ゴーン、大脱走」という番組を流した。...
番組では逃亡の再現、マンガ仕立てでのゴーンの半生、関係者やフランスの専門家、弘中惇一郎弁護士のインタビューなどをまじえた中に、5分ほどレバノンでとった本人のインタビューが入っている。その大部分は、日本の司法についての批判である。
「私が日本を離れた理由は、
司法の否定があったと思ったからです。私がレバノン、フランス、ブラジルに求めるのは、これら3カ国の市民として、きちんとした司法です。 私は法を超えることを求めていませんが、法を下回ることも求めません」(「司法」と訳した
原語「justice」には「正義」という意味もある)」
「この前日の7日に、民放のニュースチャンネル『BFM』でもロングインタビューが放送された。そこでも熱がこもっていたのは、日本の司法批判だ。
「日本の司法について人々は誤解しています。もし北朝鮮だったら、私が何をしても必ず負けるということはわかっています。でも日本でまさかそんなことになっているとは思いません。彼らの司法制度は別物で、それは経済大国から想像されるものではありません」
「
無実であろうと有罪であろうと、検察官にとっては問題ではないのです。彼らは、
自分の保身と出世のために勝たなければならない。結果は初めから決められているのです。私は有罪になると確信していました。だから、ここから去らなければならないという結論に達したのです」」
ゴーン氏の主張を裏付けるものなのか、あるいは、ゴーン氏の宣伝が効いたのか、どちらなのかはわかりませんが、国連からゴーン氏逮捕を批判するような意見書が出たそうです。
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ゴーン氏逮捕は「根本的に不当」 国連作業部会が意見書(朝日)
「国連人権理事会の「恣意(しい)的拘禁に関する作業部会」は23日までに、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告の日本での勾留について、「4度にわたる逮捕と勾留は根本的に不当だ」などとする意見書を公表した。「適切な救済策」として、日本政府はゴーン氏に賠償すべきだとしている。」
ゴーン被告勾留は法手続きの「乱用」−国連人権理事会の作業部会(ブルームバーグ)
「同作業部会は「ゴーン被告に対する逮捕の繰り返しは、
勾留を確実に継続するための手続きの乱用と見受けられる」と論じ、期間が異なるだけで同じ嫌疑について少なくとも2度逮捕されたことに言及した。
さらに「逮捕・勾留の繰り返しは国際法に基づく法的根拠を一切持ち得ない、司法の権限を越えた手続きの乱用だった」との見解を示した。」
「日産の担当者はコメントを避けた。東京地検に23日に電話をかけたが応答はなかった。外務省は23日、事実誤認があることなどから同作業部会でゴーン被告について採択された意見を「
完全に拒絶する」とのコメントを発表した。20日付で異議を申し立てたという。」
ゴーン氏を訴追したことを問題にしているわけではなく、逮捕を繰り返して勾留を引き延ばしたことを問題にしているのでしょう。また、記事によれば、日本からの逃亡についての意見ではないとのことです。
外務省の反論。
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国連の恣意的拘禁作業部会(ゴーン被告人案件)による意見書公表
こういう恥ずかしい事件もあったので、外務省の言い分は信用できません。
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上田秀明大使、国連で「シャラップ!」(2013年)(ハフポスト)
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