「有価証券報告書に係る監査報告書の監査意見不表明...に関するお知らせ(ウェッジホールディングス)」
会計監査
2020 年9月期の有価証券報告書に係る監査報告書の監査意見不表明並びに内部統制報告書に係る内部統制監査報告書の監査意見不表明に関するお知らせ(PDFファイル)
ウェッジホールディングス(ジャスダック)のプレスリリース。
2020 年9月期の有価証券報告書に係る監査報告書について意見不表明の監査報告書を受領したとのことです(監査人は監査法人アリア)。内部統制監査報告書も同様です。
財務諸表監査の監査報告書には「意見不表明の根拠」として以下のように書かれているそうです。
「(追加情報)に関する注記(JTRUST ASIA PTE.LTD.等との係争について)の記載のとおり、会社の
連結子会社でタイ証券取引所上場の Group Lease PCL(以下、GL)の子会社 Group Lease Holdings PTE.LTD.(以下、GLH)は、2020 年 10 月 6 日に、JTrust Asia Pte.Ltd.を原告とするシンガポール共和国での損害賠償請求訴訟の判決において、GLH ほか被告 6 名に対し、
約 7 千万 US ドル及び約 13 万シンガポールドル(日本円で約 74 億円)の支払いを命じられた。
当監査法人は、重要な構成単位である GL の連結財務情報について、GL 会計監査人にグループ監査に基づく監査及びレビュー業務を依頼しているが、
上記の判決に関連して GL 会計監査人の検討が継続しており、計画した監査手続を完了することができなかった。
GL の連結財務情報は、会社の当連結会計年度に係る連結財務諸表の数値の大半を占める重要な構成単位であり、連結財務諸表に与える影響は、重要かつ広範であるため、当監査法人は、上記の連結財務諸表について意見不表明とすることとした。」
同社2020年9月期有報を見ると、主な追加情報注記は、「連結子会社Group Lease Holdings PTE.LTD.が保有する貸付債権等について」と「JTRUST ASIA PTE.LTD.等との係争について」の2つです。
監査報告書の不表明の根拠で参照しているのは、後者の係争事件についてだけですが、前者の貸付債権等の問題も、タイ証券取引委員会など現地当局から子会社が調査を受けており、過年度決算の訂正命令が出ているなど、重要性がありそうです。それについては、注記によれば、連結上、命令どおりの訂正は行っていないが、十分な引き当てを行っているので、一応解決済みという考え方のようです。監査人も、不表明の根拠で記載していないので、容認しているのでしょう。
係争事件については、いくつかの訴訟が提起されており、継続中のものもあるようですが、約74億円の損害賠償責任が確定した判決(10月6日のものなので修正後発事象)もあるわけですから、それについては、引当てすればいいというだけの話であり、それでもって不表明にするというのは理解できません。なお、損益計算書では訴訟損失引当金繰入額が約23億円計上されていますが(引当金も同額)、74億円とはかなりの差があります。
そもそも、監査報告書で構成単位の監査人についてふれることは、普通はないはずですが、意見不表明のような例外的な場合には認められるのでしょうか。あるいは、現地監査人の事務所名を記載していないからいいのでしょうか。また、現地監査人による検討が終わってないからという理由しか書いていないというのは不十分なのではないでしょうか。現地監査人は、連結監査上は、主たる監査人の手足にすぎないのですから、きちんとコミュニケーションを取って、どういう手続がどのような理由でできていないのかまで、きちんと書くべきではないのでしょうか。
PR|
amazonビジネス・経済