「伊藤忠は、本当に「不正会計」をしているのか(東洋経済より)」
不正経理
伊藤忠は、本当に「不正会計」をしているのか
米国空売りファンドの幹部に真意を直撃
伊藤忠商事が2015年3月期の当期純利益を過大報告したと指摘している空売りファンド、グラウカス・リサーチ・グループのリサーチ部門ディレクターへのインタビュー記事。
「安倍首相が取り組むコーポレート・ガバナンスや透明性の確保には、日本の市場参加者が投資に関する意見を自由に交換できるようになる必要がある。同時に、われわれはマーケットに、今回の伊藤忠のような疑わしい会計処理に対する批判的分析がこれまでなかったと考えており、42ページに渡るレポートを作成するにいたった。
伊藤忠の株主や投資を検討している投資家が、今回われわれが提起する問題を認識すること、ならびに、全ての投資家が十分な情報を踏まえたうえで投資判断ができるよう、公の場で議論することが必要だと考えている。」
監査法人にもふれています。
「伊藤忠は再三にわたって、有限責任監査法人トーマツ(DTT)の陰に隠れ、DTTから連結財務諸表は「適正であるとの監査意見を取得」している、と繰り返すことで投資家を安心させようとしている。しかし、
著名な監査法人が伊藤忠の財務諸表の適正性を表明していることは、同社が不正会計事件に巻き込まれないことを保証するものではない。
新日本有限責任監査法人は、東芝に対して無限定適正意見を表明したが、東芝の不適切会計を見過ごしたことによる重大な義務違反があったとして、日本の規制当局に21億円の課徴金を課されている。有限責任あずさ監査法人は、オリンパスの財務諸表について無限定適正意見を発行している。米国史上最大級の企業不祥事を引き起こした米エンロンの財務諸表についても、著名な会計士事務所であったアーサー・アンダーセンが無限定適正意見を表明していたことが注目に値する。
さらにDTTは、不適切会計の検知にかけて、最高の評判を有しているわけではない。
DTTは、香港に上場するChina Metal Recyclingの監査人を務めたが、われわれは2013年にこの企業の詐欺行為を暴いている。要するに、著名な監査法人による無限定適正意見は、不正会計に対する防御手段にはならない。それゆえわれわれは、伊藤忠が独立した調査委員会を指名し、独立法人によって、財務諸表の完全性、および、われわれの詳細なレポートが指摘する問題点を検証するべきである、と確信している。」
問題のレポートはこちらから。誰でも入手可能です。伊藤忠のプレスリリースへの反論も載っています。
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Itochu Corporation (TYO: 8001)(グラウカス・リサーチ・グループ)
伊藤忠商事株式会社(東証:8001)に対するグラウカス・リサーチの返答
マスコミ報道(先日取り上げたもの以外)
米ファンドのグラウカス、伊藤忠に「不正会計の恐れある」とリポート 伊藤忠は「適切に処理」と反論 株価は一時10%下げ(産経)
伊藤忠を日本初の標的に、空売り投資家グラウカスが会計手法批判(ブルームバーグ)
「グラウカスは、伊藤忠の3社への投資に絡む会計手法を問題視。コロンビアの炭鉱事業の持ち分について、不適切な区分変更によって1531億円相当の減損損失の認識を回避したと分析した。さらに、中国政府系の中国中信集団(CITIC)傘下企業の利益を持ち分法適用関連会社として連結会計に取り込むことや、中国食品・流通会社の頂新に関する持ち分の区分変更に伴う特別利益発生のタイミングにも疑問を呈した。」
伊藤忠に独立調査委の設置と会計処理の検証を要求=米グラウカス(朝日)
日本取引所CEO、伊藤忠株急落で対応も 金融庁も関心(日経)
「金融庁や証券取引等監視委員会も今回の件には関心を寄せており、慎重に対応を検討するとみられる。金融商品取引法は株式などを売買する目的で、合理的な根拠のない風評などを流す行為を禁じている。」
ファンドの取引を調べるだけでなく、当然伊藤忠の会計処理の方も調べるべきでしょう。海外会計基準の解釈に関わるので、難しいのかもしれませんが。
伊藤忠のプレスリリース。
当社の会計処理に関する一部報道について(その2)(伊藤忠商事)(PDFファイル)
インタビューの中でふれている香港上場だった会社の記事。香港当局は(日本の金融庁と違って?)きちんと調べてこの会社に対する処分を行ったそうです。
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Hong Kong watchdog wins landmark case against China Metal Recycling(2015年2月)(ロイター)
Feb 26 Hong Kong's securities regulator has won a two-year battle to wind up Hong Kong-listed China Metal Recycling Holdings Ltd (CMR), in a victory that bolsters its authority to sanction overseas companies it suspects of wrongdoing.
The case was widely seen as a test of the watchdog's ability to pursue firms based abroad but listed in Hong Kong, where around 60 percent of public companies are from mainland China.
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