組曲 キージェ中尉  CD・レコード

 先週はジョージ・セル(クリーヴランド管弦楽団)の「組曲 ハーリ・ヤーノシュ」を取り上げました。今日は、その“SZELL CONDUCTS MUSICAL FABLES”にも収録されていた組曲「キージェ中尉」です。この映画音楽には、フェドセーエフ指揮モスクワ放送交響楽団の、少々まったりした1993年の演奏を。個々の楽器がのびのびと、時には思う存分高らかに歌っていて、私はこれが好きです。

◆プロコフィエフ:管弦楽名曲集◆
ウラジーミル・フェドセーエフ指揮
モスクワ放送交響楽団
国内盤は売り切れです。輸入盤は鋭意探索中。

 私は昨年の5月、兵庫県芸術文化センターでフェドセーエフ指揮のモスクワ放送響コンサートを聴きました。演奏されたのはチャイコフスキー:祝典序曲「1812」と弦楽セレナード、ショスタコーヴィチ:交響曲第10番 ホ短調 op.93。 おもしろかったのはアンコール、ショスタコーヴィチの付随音楽「条件つきの死者」op.31より“ワルツ”、そして映画音楽「司祭と下男バルドの物語」op.36より“バルドの行進曲”でした。

 このアンコールには、金管楽器を持った白髪の小柄な楽団員が2人加わりました。ところが出て来た2人は、待ちくたびれていたところをやっとこさ呼ばれた…といった風情なのです。服装もなにやら着崩れた様子で、初めから舞台にいた楽団員とは明らかに違う空気をまとっていました。男ぶりは上がらないけど、管理職には何も言わせないってくらいの古参団員? この2人がアンコール曲のソリストだったのですが、演奏された曲は彼らの雰囲気そのままで、直前の交響曲とは全く違う味わいでした。

 交響曲、しかもショスタコーヴィチの10番、はて…? だった私にとっては、コンサートのイメージ一新、終わりよければすべてよし。そしてこの音盤「キージェ中尉」は、あのアンコール曲の印象という、いわばフィルターを通して聴いています。



 ソ連映画「キージェ中尉」(1934年ベラルーシ国立映画製作所)は貴族社会の無知無能ぶりを風刺した喜劇です。登場するのは神経衰弱気味の皇帝とその侍従たち。聞き違いで生じた皇帝の恣を叶えるために、侍従たちがあることないこと…どころではなく、ないことないこと…を捻り出して右往左往する様子を描いています。音楽を依頼されたプロコフィエフは、映画という近代的な製作に参加することに意欲的だったということです。また、祖国の社会主義にも貢献したかったとか。映画が封切られた1934年頃、彼はパリから帰国してこの組曲を発表しました。

 その当時はモダンで洒脱な音楽とみなされたのでしょうか。モスクワ放送響の演奏は軽妙で、どこか冗談めいて、誰かをからかっているように聞こえます。後の日本映画などにも影響したのでしょうか。古い映画のコミカルなシーンの音楽に通じるものがあるような気がします。

 冒頭「キージェの誕生」のトランペットに続いてピッコロ(フルート?)がとても元気よく進み出てきます。次々に現われる楽器は戯れるように入れ替わり、重なり合い、楽しげに会話しているかのようです。太鼓はバンッ!他の曲だったら「無神経な叩き方すなっ!」と大目玉かも?というような。

 もちろん、そんな可笑しみはあってもちゃんと管弦楽団。第2曲「ロマンス」や第4曲「トロイカ」は庶民が口ずさむ歌のように素朴で土臭い旋律に伴奏部の旋律を絡ませ、奥行きと陰影のある演奏です。

 「ロマンス」はバリトンの歌付きで演奏される楽譜もあったそうです。チェロやサックスが演奏するところかな。雌の鳩が連れ合いがいなくなって哀しげに泣いている、という始まりがやがて自分のことになり、恋人と交わした約束は〜と続くようです。ちょっと酔っぱらってる?

 「トロイカ」はあの清し瞳の青年が歌うような弦の旋律が「女の心は居酒屋のようなもの、いろんな輩が出たり入ったり休まることがない〜さあみんな…」というようなロシアの戯れ歌だとか。う〜ムムム、言葉のわからない外国の歌には気をつけましょう。他の曲ではちょっとまったり系のモスクワ放送響が、この曲ではよく滑ってることといったら…。

 最後はもてあました侍従たちによって葬式を出されてしまうキージェ。この「泣き女」ならぬ「泣き楽団」は、最後まで立派におつとめしております。
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2007/5/19  22:30

投稿者:sweetbrier

吉田さん、こんばんは。コメントありがとうございます。
フェドセーエフのコンサート、初めて聴くショスタコーヴィチも含めて印象深いものでした。「1912年」の盛り上がりと打楽器陣の頑張り、弦楽セレナーデのモノトーンなストリングス、ショスタコーヴィチ交響曲での木管の強奏などなど。

あ、それから先日いただいたコメントにお返事1つ書き落としてました。「美しい五月」、お気づきのとおり「詩人の恋」から借用しました〜

2007/5/19  10:07

投稿者:吉田

こんにちは。
フェドセーエフのコンサート、なかなかすごいプログラムですね。こころゆくまでオケを堪能できそうです。
私も「キージェ中尉」(と「ハーリ・ヤーノシュ)を聴きなおしてみようかと思います。棚で埃を被っちゃっていますが。

http://beethoven.blog.shinobi.jp/

2007/5/19  0:13

投稿者:sweetbrier

Niklaus Vogelさん、こんばんは。
そう、ブログを始める半年くらい前の演奏会です。オーケストラのコンサートは年に1回くらいを目標にしています。まだやっと2回なんですよ。

アンコール曲、ソリストのひとりはサックスでした(なにサックスかわからないというトホホな報告ですみません)。オーケストラのまったりジャズふう伴奏で舞台の隅っこからプカ〜と吹く、なんとも味なおじさんでした。

2007/5/18  23:31

投稿者:Niklaus Vogel

sweetbrierさん、こんばんは! フェドセーエフ来日演奏会の件、「ブログで書かれていたことを思い出せない!」と思いましたが、当然ですよね…昨年の5月では(´▽`)
「キージェ中尉」と「ハーリ・ヤーノシュ」はカップリングとされていることが多かったような気がします。だからでしょうか、苦手意識をもったまま、ずうっと聞いていません。関連性のあるマンスリー企画があった時に数十年ぶりに再挑戦してみようと思います!
ところで、アンコール曲に演奏されたというDSCHの曲は知り得ませんが、実演ならではの愉しい演出ですね。

http://yaplog.jp/niklausvogel/


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