パンズ ラビリンス  映画

 スペイン映画「パンズ ラビリンス」を観てきました。

 「大人のためのダークなファンタジー」などとされているこの作品、たしかPG12だったかな。舞台はスペイン内戦後、パルチザンを掃討する小さな部隊の駐留地。凄まじい暴力の一端も描かれているためです。

 感情的に揺さぶられる佳境はラスト十数分に尽きるのだけれど、ミステリアスでダークなファンタジーと、抗いようがない恐ろしい現実が交互に描かれる画面に最初から引きこまれました。ファンタジーは少女の心象世界であるゆえ、彼女だけがその両方を行き来します。ところがラストシーンは、そのファンタジーと現実が同時に、ひとつの地点に達します。

 幻想と現実がどんどん絡みつき、交錯する物語をドキドキしつつも楽しんでいた私は、そこに至り、殉教者の内面を突きつけられたようで、なんとも痛かった。少女の魂が救われたとて、カタルシスどころではありません。思想、哲学は人間を物理的に救えない。魂が救われたと感じる人は、運命のラビリンスのどこかで、自らを救う道を(救われようとは思わずとも)、自主的に選び取って進んだのだなと、隣に座った行きずりのお姉さんといっしょに涙が止まらなかったのでありました。

 でもそれも厳しいよ。「これこのように、救われた魂は幸い」と、誰が言えるのだろう。映画を観る私は、もうひとつの命が助かったことに救われたのだわ。

 実はこの後、ジョディ・フォスターの 「ブレイブ ワン」 を観に別館へ走ったのでありました。弱肉強食という言葉が定義する「強者」とは、この主人公ように強毅、剛健な人のことなのでありましょう。大昔から、何人もいたに違いありません。十代の私など、憧れたものであります。

 でもこの日は、ブレイブ ワンズよりはるかに多いはずの、名もない弱者のことを考えつつ、時間のやりくりをしてもラビリンスを観に行ってよかった〜と思ったのでした。
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2007/12/1  21:54

投稿者:sweetbrier

ブレイブ ワンは、問題提起だけであとは丸投げの映画でしたね〜。そんなのありかな。

弱肉強食の強者、というのはちょっと舌足らずでした。う〜んん、うまく言えませんが、過酷な体験から再起でき、しかも暴力に対して同じ手段で攻撃に転じたという意味で、「食うもの」と感じたんですよ。

しかも、最後は警官が…すんごいチカラワザ。こりゃ勝てんワ、です。

パンズ ラビリンスを見てよかったと思ったのは、主人公が汚れなかったということよりも、彼女のしたことが「命」という、この世で最も美しいもののひとつに繋がったからだと思っています。映画の中でそれを見せてくれたから、泣けたんですよ。

「ブレイブ ワン」は、主人公のしたことがいったい何につながり、次に何を生むのか、観る者に丸投げだと感じました。だから、ファンタジーよりずっとキツかったです。先に見えるのが、果てしない不毛の砂地のようで。ほんと、私たちどうしたらいいんでしょうね〜
・・・って、深刻になり過ぎかな?

http://ivory.ap.teacup.com/sweetbrier/

2007/12/1  21:33

投稿者:sweetbrier

仁菜さん、こんばんは。
いろいろたくさんコメントありがとうございます♪ ご覧になってたんですね。話題になってなかったのでこちらに書いたんですが、それだったらスオミちゃんとこに書き込みに行けばよかったな〜。

「ファンタジーなゲルニカ」、なるほどです。空想といえど、現実に生きている世界の恐怖や不安を映すものですねえ。

初めの方で、主人公オフェリアが山中からついてきた虫に「妖精ってこんな姿なのよ」と絵本を見せ、そっくりの姿にメタモルフォーゼさせてしまうところがありましたよね。妖精の肌の柔らかで生暖かい感じがよく出ていました。
そんなふうに、ファンタジーの世界のものたちも体温を持っているかのように生々しくて、よけい怖かったです。
それから、マリベル・ベルドウの存在感! ひとりだけ、表情が違いましたよね。厳しい時代の空気を女性陣では1人で引き受け、表現していたという感じです。彼女が出演した他の映画も見たいですね。テレビ放送に気をつけていよう。仁菜さん、お気づきになったらぜひぜひお知らせくださいね。

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2007/12/1  3:54

投稿者:仁菜

訂正です。
パンとペイルマン(怪物)を演じたのはダグ・ジョーンズという俳優で、監督とは別人でした。ちょっと誤解してました。すみません。

私はメルセデスを演じたマリベル・ベルドウが気に入りました。彼女の他の映画も見てみたいな。でもスペイン映画って、あまり来ないですね。ペネロペ・クルズはスペイン出身で大出世株ですが。

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2007/12/1  3:22

投稿者:仁菜

(長過ぎたので、続きです)
このあと「ブレイブ・ワン」も見られたのですか。それはあまりにも対照的な作品をご覧になったのですね。こちらもブログになかなか書けませんが。

私にはこのヒロインが必ずしも強者には見えませんでした。確かに現実にはこのような事件に巻き込まれたらトラウマで立ち直れない人が多い中、ある意味彼女は強いのかもしれませんが。あそこまで彼女を追い込んだものは、彼女の心底にある弱さの裏返しの強さなのでは。上手く言えませんが、全てを失った彼女には最後に残されているのは「死」だけであって、そこまで行く前ならどんなことだってできるという気持ちがあのような行動を取らせたのではないかと。こちらは何か、わかりやすい気がします。この辺、やっぱりアメリカ映画だな〜と思います。

「パンズラビリンス」はスペイン製ファンタジーという点が、同じようにパン(ファーン)が出てきても「ナルニア国物語」などとはかなり違うな〜と感じましたが、私もやはり見に行ってよかったです。補足ですが、あのパンを演じていたのは、目のない、子供を食べる怖ろしい怪物も演じている監督なんだそうですね。

http://ninajewel.blog90.fc2.com/

2007/12/1  3:19

投稿者:仁菜

sweetbrierさんもご覧になったのですね。実は私も10月半ばに観てきました。映画好きの友人に勧められ、当地では1館しか上映してなかったので、車で1時間も走りました。
blogにアップしようと思っている間に時間が経ってしまい、書けなかったのです。「(大人のための)ダークな」というところを知らずに行ったものですから、ただのファンタジーではないことに途中で気がつき、ある意味ショッキングな映画でした。本当におっしゃるように様々に複雑な思いが交錯して、どうにも纏まらず。sweetbrierさんは、さすがに巧く表現していらっしゃいますね。途中主人公に苛立つ場面が多かった私は監督のマジックにまんまと嵌っていったようです。私も最後は涙が溢れそうでしたが、単純に泣けない、本当によく錬られた映画だと思いました。おっしゃる通り、もうひとつの命が助かったことだけが救いでした。

なので、私の中でこの映画は「ファンタジーなゲルニカ」だわ、と感じたのです。ピカソのあの絵では子供を失って泣く母親が描かれていますけど。そうしたら、パンフレットに「ゲルニカ」を模した、「不思議の国のアリス」風の、でも現代的なイラストが描かれていました。皆感じることは同じなのね。小さいけれどとっても素敵なパンフレットで、その映画館では人気No.1にランキングされていました。でも小さいものですから、今どこかに紛れて行方不明です。なのでそのイラストレーターの名前がわかりません。残念。



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