シェエラザード  読書

昼過ぎに「シェエラザード」というドラマを放送していたので、なんとなく流し見した。浅田次郎の同名小説のドラマ化らしい。私は読んだことがないが、ドラマでは人間関係など、少し翻案されているらしい。

過去の出来事とそれにかかわる現在のミステリーが入り交じりながら展開していく。過去の出来事とは、太平洋戦争末期に日本の弥勒丸という客船が徴用されて密命を帯び、民間人を盾にした形でシンガポールから出航。しかし情報漏洩のため潜水艦の待ち伏せに遭い、攻撃されて沈没するというもの。たとえ民間人を乗せても船が攻撃されることは、命令したシンガポールの日本軍指令部も十分予測していたことだった。

この過去のドラマの中で沈没を予感させる緊張した船内のシーンに流れていたのが、リムスキー・コルサコフ作曲の交響組曲「シェエラザード」からシェエラザードの主題。2楽章の冒頭かな? 編集されていたかどうか、よくわからない。

R.コルサコフが千夜一夜物語に登場するシェエラザードの話に霊感を得て作曲したこの組曲は、バレエ・リュスが全く別のシナリオによってパリで上演し、主演したニジンスキーとともに大人気を博した。バレエ・リュスの「シェエラザード」に海は出てこない。

一昨年来日したハンブルク・バレエ団が上演した「ニジンスキー」では、ニジンスキーが電撃的に結婚するロモラ・プルスキーと出会うシーンに第3楽章「若い王子と王女」が使われていた。彼らが南米公演に向かう船上の出来事である。音楽は録音であったが、どういう素性の演奏かプログラムには記載されていなかった。しかし、劇場(神戸こくさいホール)の音響がよかったのか、ふくよかな弦の合奏がこのうえない潤いに満ちていて、船上に吹く南風が感じられた。



閑話休題。
ドラマの弥勒丸密命遂行責任者は堀陸軍少佐ある。彼は船長や友人の抵抗に遭いながら冷徹に軍務を執り、出航にこぎ着けるも船内に愛する女性の姿を見いだす。
「どうして乗ったっ。この船は危ない!」
そこに及んで彼は初めて情を見せ、どうすることもできない境遇を呪うのである。
2000人以上の命を盾にしても、身内が死ぬのは我慢ならないのか? 腰を据えてドラマを見ていなかったので、その変わりように同情できなかった。

終わってみて思い出したことがある。
「自分にとって大切な誰か、顔を思い浮かべることができる誰かのために『ノー』と言う、それがこの世界を変えるはじめの一歩になるはずだ」という言葉である。
これは、昨年の春頃にバレエファンのブログで読んだ文章だった。
訂正と追記:2月13日
日付が変わってからこのネタもとにたどり着きました。
このブログを読んで、私が当時の日記に書いたのが↑でした。訂正して追記します。
以下はそのブログからの引用です。

何かの時に本当に力になるのは、顔の見える具体的な一人ひとりとのつながり(直接的にであれ、間接的にであれ)なのだとあらためて思う。
「ロシア人」(中略)という抽象化されたマスな存在ではなく、一人でも二人でも、具体的な相手を思い浮かべた時の切実さは、途方もなく強い。
 本当に「安全保障」なるものがあるとすれば、そうした一人ひとりの結びつきだと思う。国同士の惨禍を食い止めるものは、戦略ミサイルでも核兵器でもなく、その地に住むかの人を思う、人々の心だと。

以上 引用終わり


「ロシアでは予算不足のために職業軍人を十分確保できず、暫定的に徴兵に頼らざるを得ない。そこでバレエ・ダンサーなど、芸術家に対して設けられている徴兵猶予の枠(人数)を削れという論議がある」という情報について書かれたものだった。実際にはその事実について続報がほとんど得られず、それ以上の話題にはならなかった。

だけど・・・
「身近な誰かのことを思って『ノー』と言う」
それは私にとって、とても踏み出しやすい一歩だった
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2007/2/14  0:11

投稿者:sweetbrier

綾瀬川さん、いらっしゃいませ。コメントとTB、ありがとうございます。私の方こそ、心に残った言葉について書けたことがとても嬉しいです。

クラシック音楽、バレエ、読書、写真そのほか少しずつかじったことの寄せ集めですが、ブログを始めたことで豊富な経験と資料、深い考察をお持ちの皆さんと交流することができ、ご教示もいただいてます。楽しいです。これからもどうぞよろしくお願いします。
m(_ _)m

2007/2/13  22:51

投稿者:綾瀬川

sweetbrierさん、こんにちは。
古い記事でしたのに、覚えていてくださってありがとうございました(徴兵制の件はなんともしまりのない終り方になってしまって申し訳ないです……)。とても嬉しかったです。
時々寄らせていただいて、ゆっくり読ませていただきますね。クラシックはまだまだ初心者なので、楽しみです。

http://homepage3.nifty.com/ayasegawa/


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