職場のテリトリーの中学校にアーサー・ビナードさんが講演にみえて、運良く聴きに行くことができた。ところが。
メインは中学生のための事業なので、後ろにパイプ椅子を並べて遠慮がちに佇んでいたが、中学生たちのあまりにひどい態度に愕然とする。私語はもちろん、後ろを向いての突っつき合い、ウグイスを真似て口笛を吹いたり、果ては靴下まで放り投げる。
このときには、さすがに温厚なビナードさんも、「いま、靴下が飛んで来ましたけど」とあくまで静かな口調で諭された。あまりに目に余る子どもには、先生が注意しに行くけれど、効果無し。おまけにじっとすわって話を聴くのに絶えられなくなった子たちは、(たぶん事前の先生との申し合わせがあったようで)次々と教室を出て行く。あまりに酷い状態に、ビナードさんがお気の毒でしょうがなかった。
でもこの中にも、少数でいいから、ビナードさんのお話に引っかかってくれる子がいるかもしれない。ということを切に念じた。たぶん、ビナードさんもそれを思って、ものすごい忍耐力で最後まで話をされたのではないかと思う。
もっとも「言葉の面白さ」「異文化を知るという事」「自国の文化的バイアスがかかっている物の見方を自覚する面白さ」などのソフィストケートされた話は、たしかに中学生にはレベルが高過ぎたかもしれない。もっとストレートに
絵本『ここが家だ!』みたいにインパクトのある話の方が、食いついてくれたかも。
生ビナードさんは、エッセイなどから忍ばれる人柄どおりの、シンプルで芯があってアツくて優しい、尊敬すべき方で、ほっとした。よかった。
最近教育評論をされてる方が、講演の舞台裏では、その教育論とはうらはらな傲慢な態度をとっていた事を知り、愕然としたばかりだったので。

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