例えば「本当にあった怖い話」とか、都市伝説とか、恐怖漫画とかホラー小説や映画は、私は遠巻きにして近づこうともしないくらいダメなんだけど、そんな私がどうしても欲しくて買ってしまった「こわい本」がある。
しかも単行本にしては、なかなかのお値段だった。6、7年前に買った値段が2300円+税。普通なら、たぶん買わない(買えない)。
でもこれは、ながいこと手にとったあげく、さんざん本屋さんに通ってなやんだあげく、ちょっと立ち読みしたあげく、どうしても欲しい本に間違いないことが決定したので、清水の舞台から飛び降りた。
買ったのは、内田百けん/著 金井田英津子/画 パロル舎/刊の
『冥土』
あの内田百けん先生の、不気味だけどリリカル、かろやかだけど胸苦しいほどインパクトのある文章に、がっちりと向き合って補完しあう金井田さんの版画。これぞ、コラボ。
純度の高い恐ろしさに酩酊。いわく言い難い、名付けようもない不思議なトリハダ世界。ある意味、オトナだけが味わえる恐怖感かも。
パロル舎の『冥土』は造本の傑作。本という形態で読む幸せを、しみじみと感じさせてくれる逸品。手に取って、つくづくと味わっていただきたい本です。

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