「Eのことやったら、いくらでも面白い話あるで」というH氏が、朝からネタを提供してくれたので、またもアマゾンの野生児、E君の話である。
E君が鍋料理のたびに、ナマ肉をガツガツと食べているのを見て、哀れに思った心優しいOBのK先輩。
「お前、そんな加熱用のナマ肉違て、ホンマに旨いナマで食える肉の店に連れてったろー」というお誘いがあり、E君、他数名は喜んで誘いに乗った。
翌日H氏が部室に来たら、いつものようE君はにこにこと部屋に佇んでいた。「あとの人達、どうしたんでしょうねえ? きませんねえ」と訝りながらE君は、無邪気にH氏に話しかけた。「そうそう、昨日K先輩に、ナマでおいしい肉が食べられるレアなお店に連れて行ってもらって、御馳走していただきました♪ 久しぶりに懐かしい味に出会えました♪♪」
懐かしい味って?! 後でH氏が聞いた話によると、K先輩が連れていったレアなお店の主人は、E君の食べっぷりに大喜びだったらしい。「これは、どや?」「あれは、どや?」「まさかコレは食えんやろ〜?」と面白がって、秘蔵の??ナマ肉を次々に出してくれたそうである。
普通の人々が「どや、E? 食えるか??」と固唾を呑んで見守るなか、クンクンと臭いをかいでから、「臭くないし、大丈夫ですよ〜」と美味しそうに食べまくるE君につられて食べる「普通の人々」なのだった。プラス店の主人も宴会に混じり、楽しそうに飲み食いしたらしい。
その後お開きになり各自帰宅後、E君を除くそれぞれに深夜の大惨事が待ち受けていたのは、賢明な皆様のご想像の通り。もちろん店の主人込みである。おまけに御馳走してあげた恩人のK先輩などは、真夜中に救急車で運ばれ入院するという、カフカもびっくりの不条理な結末が待っていたのだった。
「よいこの皆様はマネをしないように」というテレビでお約束のように流れるテロップは、こういうときのためにあるのだと思い知るエピソードなのであった。
しかし秘蔵のナマ肉の正体って、一体なに? Eくんの「懐かしい味」っていうのも、非常に怪しい。

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